2025年04月23日 公開
仕事の進捗や職場の人間関係など、ビジネスパーソンは多くの悩みを抱えているもの。自分の時間であるはずの休日にもこれらの悩みが頭をもたげ、気が休まらないまま平日を迎えてしまう......という人も多いのではないか。しっかりと気持ちを切り替え、休日を満喫するには、どうすれば良いのだろうか。心理カウンセラーのるろうに氏に話を聞いた。(取材・構成:高橋京子)
※本稿は、『THE21』2025年3月号より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
管理職特有の休めない理由の1つとして、部下に仕事を任せる機会が増えることで生じる「仕事がうまく進んでいるだろうか」という漠然とした不安が挙げられるでしょう。では、自分一人でコントロールしきれないことで頭を悩ませないためには、どうすれば良いのでしょうか? 私が思うに、「肯定的に諦める」という姿勢が大切です。
ここでの「諦める」とは、仏教に由来する「現実を明らかに見る」という意味で、ギブアップすることではありません。つまり、物事を現実的に捉えるということです。
現実的に考えれば、自分と部下では、同じ仕事をしても成果物やプロセスが異なるのはしごく当然です。私自身、YouTubeチャンネルの編集作業を外部スタッフに依頼していますが、事前にイメージを事細かに説明していても、できあがった動画を確認すると必ずどこかでズレが生じています。これまで200本以上の動画を投稿してきましたが、イメージ通りだったことはありません。それだけ、人に任せた仕事が自分の想定通りに進むということは非現実的なのです。
この現実を受け入れることで、上司と部下の間にズレが生じるのも自然なことだと感じられるようになります。その結果、いちいち細部まで干渉せず、「ズレるのが当たり前だから、その人のやり方で進めてもらおう」と思えるようになるのです。
もちろん、最終的なゴールや「ここだけは外せない」というポイントは事前に共有すべきですが、それ以外の部分については部下に任せ、その人のペースで進めてもらうのが良いでしょう。これこそが、「肯定的に諦める」ということだと思います。
オリックス・バファローズの監督を務めた仰木彬さんも、「山に登る方法はいくらでもある。自分のやり方を押しつけてはいけない」とおっしゃっています。まさに、この考え方が部下を信じて任せる姿勢につながるのではないでしょうか。そして、信じて任せるからこそ、管理職も心安らかに休むことができるのです。
ここで改めて考えてみましょう。そもそも「休む」とは、どのようなことでしょうか? 実は、身体が疲れた場合と脳が疲れた場合では、適切な休み方が異なります。例えば、肉体労働などで筋肉を酷使して疲労が溜まった場合には、ベッドでのんびり過ごすなど運動量を減らすことで疲れが癒されます。
一方で、デスクワークなどで脳が疲れている場合は、むしろ身体を動かして血流を促進するほうが効果的です。血流が良くなると脳の老廃物が排出されやすくなり、疲労が軽減されます。
また、適度な運動は睡眠の質を向上させ、結果的に脳の疲れをより効果的に解消してくれるのです。ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動を週末に1時間でもやると、メンタル悪化のリスクが下がることも明らかになっています。
週に1時間も時間が取れないという場合は、1日10分程度の運動を毎日続けるという方法でもメンタル悪化を防ぐ効果があると言われています。いずれにしろ、脳が疲れている場合は「休日にゴロゴロ」だけでは、効果がありません。自分の疲労の種類に応じた休み方を心がけることが大切です。
そうは言っても、心の持ちようだけで休日に仕事のことを考えないようにするのは、意外と難しいものです。心理学者のダニエル・ウェグナーによる、「シロクマのことを考えないでください」と言われると、かえってシロクマのことが頭に浮かんでしまう、という実験を聞いたことがある人もいるでしょう。自分の頭の中の思考を直接コントロールするのは簡単ではありません。
そこで効果的なのが、行動から切り替えを始める方法です。例えば、休日は仕事用のデバイスの電源を落としてメールアプリを開けないようにする(許されるのであれば一時的にアプリをアンインストールすれば最良かもしれません)、遊びの予定をあらかじめ入れておく、といった対策が挙げられます。
また、読書や掃除、楽器演奏など、集中力を要するアクティビティを取り入れるのもお勧めです。特にお勧めなのが料理です。料理は「この間に野菜を切っておこう」「次にこれを煮込もう」といったように、次々と考えるプロセスが生まれるため、自然と仕事のことを忘れやすくなります。
私たちは暇だと悩みがちです。そのため、楽しいことで時間を埋めて、仕事を考えられないくらい忙しくするのが良いのです。休日は楽しいことで心を満たし、充実させましょう。
何かするといっても「趣味がない」と感じている人は、子どもの頃に夢中になって楽しんでいたことを思い出してみてください。大人になると、物事に意味を求める習慣がつきがちです。「こんなことをして何の意味があるのだろう」と考えてしまい、新しい趣味を見つけにくくなります。
しかし、趣味とは「無駄を楽しむ」ものであり、人生に直接役立つ必要はありません。その瞬間に楽しさや幸せを感じられれば、それで十分です。そして、多くの場合、そのヒントは子ども時代に熱中したものの中に隠されています。
例えば、サッカーが好きだったらアマチュアチームに入る、あるいは試合観戦を楽しむ。ゲームが好きだったなら、自由に楽しむ日を作る。それだけで日々の充実感が変わってくるかもしれません。大切なのは、自分にとって楽しいと思える時間を意識的に作ることです。それが、休日や日々の生活をより豊かにする第一歩になります。
更新:04月24日 00:05