2012年10月31日 公開
2022年12月07日 更新
もう1つ、移籍を決断する決め手となったのは、「死ぬまでに何をしたいか」という自分の根源的欲求だった。
「すばらしい仲間と楽しく仕事ができて、死ぬときに『おもろかった』と思える。それが医薬の道であればなおさらよい。これが私の根源的欲求です。これに照らし合わせると、『ほかの会社に移籍できるなんて、こんなチャンスは一生に何度もない。おもろいことになりそう』と思えました」
根源的な欲求をつねに意識していると、何ごとに対しても攻めの姿勢が生まれてくるという。
「受け身の姿勢で待っていても、"おもろいこと"はやってきません。死ぬときに『おもろかった』というためには、攻めていくことが必要だという結論に、自然と辿り着きます。
たとえば、何か資料の作成を求められたときでも、『最低限のものを出せばいいや』ではなく、『どうせなら、もうちょっと調べてみよう』となる。
嫌な上司と仕事をするときでも『おとなしくしておいて、やり過ごそう』ではなく、『こっちがあの上司を使って仕事をするんだ』となります」
自分自身を振り返ると、攻めの気持ちをもって仕事をしているときほど、強い心がもてる、と中山氏はいう。
「根源的欲求を満たしたいという思いがあるから、少々のことではへこたれなくなるのです。逆に、そのような欲求がなく、たんに人からいわれたことをやらされていると、『こんなことやりたくない』となってしまう。だから、すぐにへこたれてしまうのでしょう。
もちろん、攻めていれば、それだけ失敗をする経験も増えてきます。10回に1回ぐらいしか成功しないかもしれない。しかし、攻めなければ、何もつかめません。
その勇気をもつためには、年1回でいいから、自分の根源的欲求を見つめ直すこと。そしてその欲求を意識することです」
〔1〕自分の行動の目的を考える
「面白くない仕事をあてがわれた」「意に沿わない異動辞令を受けた」。こんなとき、モチベーションを下げてしまう人は少なくないだろう。もっとも、「自分は何のためにこの仕事をしているのか」という志に立ち返れば、「この仕事だって、自分の志を達成できる。捨てたものではない」という視点を取り戻せる。
〔2〕「自分で選択した」と考える
気の乗らない仕事を頼まれた時。「仕方なくやらされている仕事」という意識が働くと、消極的な気持ちになりがち。「好きでやっているわけじゃない」と心が折れてしまうものだ。しかし、気の乗らない仕事だとしても、「自分の意思で選んだことだ」ととらえ直せば、その仕事と正面から向き合う覚悟がもてる。
〔3〕「死ぬまでに何をしたいか」考える
「死ぬまでに何をしたいか」「死ぬ直前に後悔しないためには、何をすべきか」。このような自分の根源的欲求を常に意識していると、「動かなければ何も生まれない」と何事にも積極的になるし、少々つらいことがあっても、「後悔しないためには必要なこと」ととらえることができ、へこたれなくなる。
(※『THE21』2012年11月号総力特集「折れない自分の作り方 プロビジネスマンの心を強くする習慣」より)
【中山讓治(第一三共〔株〕代表取締役社長兼CEO)】
1950年、大阪府生まれ。76年、大阪大学基礎工学部大学院を修了し、生物工学の修士号を取得。79年、米ノースウエスタン大学経営大学院を修了し、MBA(経営学修士号)を取得。同年サントリー〔株〕入社。2000年、同社取締役。2002年、第一サントリーファーマ社長。2003年、第一製薬〔株〕取締役。第一三共〔株〕常務執行役員海外管理部長などを経て2010年より現職。
更新:11月25日 00:05