2025年03月24日 公開

ビジネスパーソンであれば誰しも、「会議を何とかしてほしい」「会議が長い」「時間のムダだ」と多かれ少なかれ不満を持っているもの。「会議」のやり方を改善できれば、不要な残業を減らせ、さらに休みも取りやすくなり、同時にチームの生産性も上がるはずだ。ベストセラー『世界で一番やさしい会議の教科書』の著者・榊巻亮氏に、会議見直しのポイントを聞いた。(取材・構成:村上敬)
※本稿は、『THE21』2025年3月号特集[休みたいのに休めないリーダーを救う「休養術」]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
ビジネスパーソンが生涯に費やす会議時間を計算したことがあります。若手のときは週3回程度でも、職位が上がるごとに回数が増え、マネジャーになると1日中会議ばかり。それを1回2時間だとすると、合計3万時間になりました。すると、なんと人生の時間のうち8年分を会議に費やしていることになります。
ただ、ワークライフバランスを整えるために仕事の生産性を高めようとしている人も、会議の効率化は後回しになっていることが多いでしょう。会議は自分一人のことでなく、必ず他の人がかかわるからです。
だからといって放置するのはもったいない。会議はムダの宝庫。会議の主催者や進行役なら様々な工夫ができますし、参加者としても隠れファシリテーターとして会議を効率化させることは可能です。早速、その方法を紹介していきましょう。
まず考えたいのが、ムダな会議自体を減らすこと。参加者の立場だと会議そのものをなくすことは難しいですが、部署やチームのリーダーなら、自分が主催者となって開催している会議も多いはずです。それらの会議は本当に必要なものなのか、棚卸ししたいところです。
最もムダなのは、情報共有の会議です。今は直接集まらなくても、情報共有できるツールが色々あります。高度なツールである必要はありません。単に情報を知ってもらうことだけが目的なら、資料をメールに添付するだけでも十分に用は足ります。
ただ、情報共有の会議がすべてムダだというつもりはありません。会社として重大な事案や事故が発生した際の対応のように、情報を収集したあとの緊急措置が必要なケースもあれば、ビジョンの共有のようにリーダーが熱を込めて直接語りかけたほうがいいケースもあるでしょう。判断の基準は情報共有を同期で行なう必然性があるかどうか。非同期でもかまわないものは、会議そのものをなくすことを検討すべきでしょう。
中には、「メールは数も多く、読み飛ばすこともあるから、会議を開いて口頭で教えてほしい」という人もいます。しかし、その水準に合わせると、チーム全体の生産性が下がってしまいます。そうした人に対しては、教育も含めて、リーダーが個別にフォローするしかないでしょう。
開催しないと困る会議が残ったら、次は出席者の厳選を検討します。「議論には加わってもらわないものの、情報共有のために呼んでおいたほうがいい」という微妙な立ち位置の人は呼ばないことです。
必要のない人を出席させると、その人の時間を奪うだけでなく、会議自体の熱量が下がります。出席しないと会議の目的が達せられない人だけを呼んで開催すべきです。
自分が呼ばれている場合も、出席するかどうかは、同期でないと困るかどうかで判断しましょう。会議後に議事録を共有してもらえればそれで済むこともありますし、会議の録画データがあるなら、自身でAIツールを使って要約するといった方法もあります。何か代替手段があれば欠席する方向で調整してください。

次は、会議時間を短縮するための考え方を紹介します。会議において、主催者に必ずやってほしいのは会議の設計です。事前に決めておくべきことはたくさんありますが、ここではその中でも重要な二つ、「終了条件」と「時間」について解説しましょう。
会議のノウハウ本には、よく「最初に目的を明確にする」とあります。目的が共有されてない会議は迷走しやすいので、最初に目的を明確にするのは間違いではありません。ただし、目的だけでは不十分。どうなったら会議の目的が達成されたといえるのかがよくわからないからです。
例えば、「今日の会議の目的は議論すること」という目的設定では、おそらく時間いっぱい議論をして、結局何が決まったのかよくわからない状況になりがちです。それを防ぐために「ゴールの設定が必要」と解説する本もありますが、ゴールという言い方もやや抽象的です。「この状態になったら会議が終わる」という終了条件を具体的に設定したほうが出席者は迷わずに済みます。
この終了条件は、「~すること」ではなく、「~の状態になること」で考えます。例えば「議論すること」ではなく、「議論した結果、参加者が感じている課題を出し切った状態になること」「重要度の高い課題三つに絞り込んだ状態になること」というレベルまで明確にすれば、目的が達成できたのかどうか判定しやすくなります。
終了条件がうまく思い浮かばない人は、「この会議で何を変化させたいか」という切り口で考えてください。
会議で変化させられる対象は「人の状態」「物理的なモノ」「意思・合意」の三つです。
具体的には、人の状態とは「誰々さんが××の作業ができる状態」「出席者全員が腹落ちした状態」、物理的なモノとは「報告資料が完成した状態」「企画のたたき台ができた状態」、意思・合意とは「案を一つに絞った状態」「決裁者が承認した状態」といった終了条件が考えられます。
終了条件が明確に示されていれば、議論が脇道に逸れることが減り、目的をより早く達せられるはずです。そして1時間を予定していた会議で45分に終了条件をクリアしたら、15分早く切り上げてもかまいません。自分やメンバーを解放して、次の仕事に取りかかってもらったほうが生産的です。
さらに、会議時間を何時間にするかという設計も重要です。
会議に必要な時間はケースバイケースであり、一律に時間を決めるのは乱暴です。ただ、「慣例だから1時間」とやっていると、時間が足りなくてまた追加の会議を調整する必要に迫られたり、逆に余裕がありすぎて間延びしてしまうこともあります。主催者なら、議題や出席者数などから、あらかじめ適正な時間を割り出しておきたいものです。
最初は時間の見積もりに苦労するかもしれません。コツは会議全体ではなく、プロセスごとに時間を見積もって積み上げること。
例えば、「最初の情報共有に5分」「課題の洗い出しに20分」「課題の絞り込みに10分」というように時間配分を決めていけば見積もりやすくなります。慣れないうちはプロセスごとの見積もりにもズレが生じると思いますが、会議の経験を積んでいくうちに精度は上がっていきます。
時間配分を決めたら、出席者にも共有します。必ずしも事前に決めた通りにはいかないかもしれませんが、時間配分を共有することで出席者にも「20分で課題の洗い出しを終わらせないといけない」という意識が芽生えます。
この締切があるかないかで会議の密度は大きく変わります。できれば会議進行中にも「10分経過しました」「あと5分」と経過時間や残り時間をアナウンスして、出席者に時間を意識させましょう。
あらかじめ決めた時間配分が、途中で多少ズレていくのは仕方ないことです。ただ、各プロセスが押して会議全体が終了予定時間までに終わらなければ問題です。ファシリテーターは、時間オーバーが見えてきた段階で「延長するのかしないのか」「延長するとしたら何分か」「延長しない場合は次にどうするか」を確認してください。
「このまま終了条件をクリアできなければ来週また会議となります」と言えば、参加者全員の時間に対する意識も高まるでしょう。

会議時間を短くするテクニックは他にも色々あります。ぜひ実践してほしいのは、資料の読み上げの禁止です。本来、資料は事前に配布して共有しておくことが望ましいですが、配布しても読まずに出席する人は少なくありません。かといって資料をその場で誰かが時間を取って説明するのは非効率です。
共有しておきたい資料がある場合、私は会議の冒頭に黙読の時間を設けるようにしています。プレゼンすると1枚1分かかる資料も、各自に黙読してもらえば1枚10~20秒で済みます。10枚の資料なら2~4分。時間を区切って読んでもらい、そのあとに「わからないところがあれば説明します」とやったほうが早く議題に入れます。
ファシリテーターの腕の見せ所になるのが、発言が長い人や脱線する人への対応です。この類の出席者をうまくコントロールできないと、独演会が始まって時間配分が狂います。
対応策としては、事前に「発言は2分以内」というように会全体のルールを決めておくことや、終了条件を盾に発言を遮ることなどが考えられます。ただ、直接的な言い方は角が立ちます。
「〇〇さんの話、とても興味深いですね。今日の終了条件をクリアしたあとにもう一回お話ししてもらっていいですか」
このように相手を否定することなく、終了条件に意識を向けさせる言い方を心がけると良いでしょう。
雑談の扱いも難しいところです。単に時間短縮だけを考えたら雑談禁止が効率的です。しかし、雑談の中から新たなアイデアが生まれたり、普段顔を合わせないメンバー同士が雑談で関係構築するといった効果もあります。雑談を全面禁止にするのはやりすぎだと思います。
ここでファシリテーターがコントロールすべきは、雑談のタイミングではないでしょうか。私がファシリテーターをやるときは、会議の開始時刻になったら雑談は原則禁止。終了条件をクリアしたら、予定されていた終了時間まで好きなだけ雑談オーケーにしていました。
もちろん忙しい人は退出してもかまいません。その旨を告げたあとで、「せっかく集まったのだから、他に気になることがある人は何でもどうぞ。プライベートの話でもいいですよ」と促します。話が長い人や脱線する人も、この時間に発散してもらえばいいので一石二鳥です。

会議の時間を短縮できたとしても、もともとの目的の達成度が弱いと意味がありません。
例えば「情報は一応理解したが、理解度が浅い」「課題に対して対応策を決めたが、他にも方法がある気がする」だと、結局もう一度会議をやることになりかねません。大切なのは会議の密度を上げること。時間を短縮しても中身の濃い会議を実現すべきです。
会議の質を下げる敵の一つが「内職」です。当然ですが、内職すると集中力が下がって理解や議論が浅くなります。時間短縮の方法として「資料の読み上げ禁止」を挙げましたが、これは内職をやめさせるためでもあります。時間をかけて誰かがプレゼンしているのに、出席者は内職して説明をろくに聞いていない――。これでは二重のムダになります。各自に黙読させれば資料の理解に集中できます。
パソコンを禁止する手もあります。パソコンはうまく活用すると強力な武器になりますが、反面、内職に向いたツールでもあります。例えば、活発に議論してもらいたいときなどは「いったんパソコンを閉じて議論しましょう」と禁止タイムを設けるのもいいと思います。
一方で、パソコンの使い方としてお勧めなのは、リアルタイムの議事録作成です。会議の質を高める特効薬は、発言を書いて可視化し、みんなで共有すること。誰がいつ何を言ったのか、その場で確認できるようにすることで、議論を整理しやすくなります。
これまでのリアルの会議の場ではホワイトボードを活用することが多かったと思いますが、オンラインのメモソフトをホワイトボード代わりにしてもいい。全員がパソコンを見ると内職が発生しやすいので、ファシリテーターや書記役がメモを書き、会議室の大きなモニターに映すというやり方がいいと思います。
メモソフトでリアルタイムに議事録をつくるテクニックを磨けば、リモート会議でもそのまま使えます。リモート会議のコツは「会議資料」「議事録」「出席者全員の顔」を同時に表示すること。出席者の表情が見えないとファシリテーションが難しいし、リアルタイムの議事録がないと議論が混乱しやすい。リモートでもできるだけ対面と変わらない環境をつくりましょう。
出席者からの発言が少なく、どうも議論が盛り上がらない――。このような状況になるのは、心理的安全性を出席者に感じさせられなかったファシリテーターの責任です。まずは普段から、安心して意見を言いやすい職場づくりをすることが大切です。
会議の場でできることもたくさんあります。私がよく使うのが、出席者に自分が考えたことを逐次メモしてもらうこと。そしてそれを議論の合間に時間を取って読み上げてもらうのです。
いきなり「Aさんはどう思いますか」と質問すると、相手は「考える」と「話す」という作業を同時にやらなくてはいけません。
一方、「メモにどんなことを書きましたか。一つ選んで発表してください」なら二つの作業が分割されます。階段を二段上がるのは大変ですが、一段ずつなら上がりやすい。抵抗感が薄れて意見が出やすくなるでしょう。
応用編として、事前に宿題を出しておくのもいいでしょう。「課題を5個書いてきて」「アイデアを一人三つ発表してもらいます」と事前に伝えておけば、たいていの出席者は真面目に宿題をやってきます。その場でいきなり振るよりスムーズにいくはすです。
発言の数はあるものの、一つひとつの意見が浅いと感じるときは、三つの質問で深掘りしましょう。
「具体的には?」
「なぜそう思うのですか?」
「他にありませんか?」
これらの質問は、発言の正確さや真意、漏れの有無を確認するためのもの。フワッとした意見も、これらの質問を投げかけることでシャープになります。
ファシリテーターと出席者が一対一で会話を繰り返し、出席者同士の議論にならないパターンも避けたいところです。
「今のAさんの意見、Bさんはどう思いますか?」
このようにファシリテーションすることが基本ですが、実はここでも先ほどの三つの質問が意味を持ちます。Aさんの意見がフワッとしたままではBさんも答えようがありません。まずは意見を深掘りしてから外間の人に振るという流れを意識しましょう。
そして会議の最後には、必ず「確認」をしてください。確認するのは「決まったこと」「やるべきこと」「決まらなかったこと」の三つ。やるべきことは「担当者」「期限」も漏れなく確認します。
ファシリテーターが確認するのもいいですが、人材育成を兼ねて、この役は若手にやらせてもいいと思います。事前にその役回りを伝えておくと、任されたメンバーは、いつも以上に会議に真剣に参加するでしょう。
確認をしたうえでまだ時間があれば、会議自体の振り返りをすることをお勧めします。
「今日の会議、どうだった?」
「気になることがあったら教えてほしい」
心理的安全性があれば、メンバーから忌憚のないフィードバックがくるはず。これを会議のたびに繰り返すことで、会議はより密度の高いものへと進化していくでしょう。
*
このように「参加不要な会議には参加しない」「会議時間を短縮しつつ質を高めていく」などを意識して実践すれば、残業も減らせ、休暇を取る余裕も生まれるはず。その時間で生活の質を高められたら、それは仕事の質の向上にもつながります。「自分のチームでは無理」と思いこまず、まずはできるところからチャレンジしてみてください。
更新:03月25日 00:05