AIは急速に発展し、現代人の仕事や生活に大きな変化をもたらしています。AI時代にも安定して仕事を続けていくには、どうしたらいいのでしょうか? 本田健さんの書籍『作家とお金』より紹介します。
※本稿は、本田健著『作家とお金』(きずな出版)を一部抜粋・編集したものです。
AIは既に、文章作成やアイデア生成において、人間と競い合えるほどの能力を持つようになりました。作家は、このAIとどうつき合ったらいいのでしょうか。
まず、現時点でのAIは、いままでの情報を収集整理するのは得意でも、それを新たなものに昇華させるところまでは、到っていません。作家が持つ感情の世界の深さや複雑さは、AIにはまだ真似できないようです。
人間は、喜びや悲しみ、怒りや恐怖といった多様な感情を持ち、それを表現する力を持っています。これらの感情は、物語に深みや共感をもたらし、読者の心を動かします。
AIはデータを元に文章を生成することができますが、感情の微妙なニュアンスや個々の体験から生まれる独自の感覚を再現することはできません。作家は自分の感情や経験を物語に反映させることで、AIにはできないオリジナリティを提供できるのです。
また、人間関係や社会とのつながりも、作家が持つ強みです。
作家は、他者との対話や交流を通じて、新しい視点やアイデアを得ることができます。人間関係の複雑さや個々の体験は、物語のキャラクターやプロットに、リアリティと深みを与えます。
AIは大量のデータを解析することが得意ですが、実際の人間関係から生まれる微妙なやりとりや感情の機微を再現することは、現時点では得意ではないようです。
優れた作家は、こうした人間関係の中で得られる洞察を作品に活かすことで、AIには表現できない豊かさを生み出すことができます。
さらに、創造性と想像力も、作家がAIに対して優位に立っている分野です。
AIは過去のデータやパターンに基づいて新しいアイデアをつくれますが、本当に革新的なアイデアや、まったく新しい視点を提供するのは、まだ人間のほうが優れています。
作家は、自分の経験や知識をもとに、まったく新しい世界や物語を創り出す力を持っています。これにより、読者を驚かせたり、感動させたりすることができます。作家がAI時代に成功するためには、人間ならではの特質を意識的に磨き続けることです。
また、読者との対話を大切にし、フィードバックを取り入れることで、常に進化していかなければなりません。読者の声を聞き、作品にリアリティと共感を持たせることです。
さらに、AI技術を積極的に活用することも一つの手段でしょう。
AIは、リサーチやアイデアの整理、文章の校正など、作家の補助的な役割を果たします。これにより作家は、よりクリエイティブな部分に集中することができ、効率的に執筆活動を進められます。AIを敵視するのではなく、アシスタントのようにうまく活用できれば、より質の高い作品を生み出せるでしょう。
AI時代には、作家は、より人間らしく赤裸々に感情を語り、人間関係の機微を描くことが求められます。ビジネス書や実用書の作家であっても、単なるノウハウだけではAIに負けてしまいます。ノウハウに感情的な要素を取り入れるなど、AIの上をいきましょう。
作家とAIの話をしましたが、すべての人にも同じことが起きると思います。
優秀な人は、AIを使いこなして、いままでの能率の10倍の仕事ができるでしょう。いってみれば、無給で働いてくれるアシスタントが、アルバイトに応募してくれたようなものです。「給料はいらないから、そばで働かせてください」と言うので、インターンとして入れてあげたら、すごく優秀だったという感じでしょうか。
一方で、アシスタントレベルの仕事をしてきた人は、大ピンチです。イラストレーター、マーケッター、コピーライターなどはもちろんですが、医者、会計士なども危なくなります。データを整理するぐらいのことは、AIやAIによってサポートされるソフトが、いとも簡単にやってしまうようになるからです。
AI以上の人は、これまでの仕事を一気に次元上昇させることができると思います。仕事ももっと引き受けられるし、スピードも何倍も早くこなせます。AIアシスタントは、お給料を払わなくても、すぐに対応してくれます。そういう意味では、年収も10倍になるのではないでしょうか。
一方で、AI以下の仕事しかしていないような人の仕事単価は大幅に下がるはずです。AIなら、たった10秒で、しかも無料で、イラストをつくってくれます。そのクオリティー、そのスピード以上のものが出せなければ、仕事が激減したり、受注金額が大幅に下がったりしてしまうでしょう。
人によっては、収入が10分の1になる人だって出てくるかもしれません。そう考えると、AI以上の人は10倍、AI以下の人は10分の1になるとしたら、その差は、100倍にも広がってしまうということです。
これからは、クリエイティブな仕事をしている人以外にも、この格差は広がっていく可能性があります。自分がどっちにいくのか、準備しておきましょう。
更新:02月05日 00:05