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読者によるファンクラブ開設で収入を得る人も...世界の作家たちの「収入の増やし方」

2025年01月16日 公開
2025年01月17日 更新

本田健(作家)

作家とお金

出版不況が叫ばれる中、作家たちはどのようにお金を稼いでいるのでしょうか? 世界に目を向けてみると、「新しい稼ぎ方」を実践している人々がいるそう。本田健さんの書籍『作家とお金』より紹介します。

※本稿は、本田健著『作家とお金』(きずな出版)を一部抜粋・編集したものです。

 

作家の新しい稼ぎ方

日本の作家は、いまだに本を書くだけの人が多いようですが、海外の作家は、ずいぶん違った動きをしています。世界的に本が売れなくなっているために、本を書いて印税をもらうというだけの従来の枠組みから、飛び出さざるを得なかったのでしょう。

ひと昔までは、原稿を書いて出版社に送る。そして、売れた分を印税で払ってもらうという、とてもシンプルなビジネスモデルでした。ですが、本を読む人が減って、本が売れなくなってしまったので、印税以外の収入を補う必要が出てきたのです。

文芸の作家よりも、ビジネス書系作家のほうがやりやすいですが、収入源を増やす方法はいっぱいあります。主なものとして次の7つをあげたいと思います。

(1)読者のファンクラブ(オンラインサロン)
(2)読者への本の直販
(3)自主開催の講演、セミナー、企業研修(オンラインも含む)
(4)認定コーチ制度
(5)個人面談、グループコンサルティング、マスターマインド
(6)世界を舞台にした、大人の遠足旅行
(7)自分の店(飲食店やブックカフェ、ジュエリー、洋服)を開く

では具体的に、作家たちがどんなことをしているか、それぞれを見ていきましょう。

 

(1)読者のファンクラブ(オンラインサロン)

ファンを組織化するのは、歌手やタレントの間では、当たり前だったと思います。海外では、作家も同じように、ちゃんとしたファンクラブを持っている人たちがいます。

ファンクラブは、無料のものが多いですが、何千人、何万人もの有料会員が世界中にいる作家もいます。少額課金でも、それだけの規模になれば、安定的な収入につながります。

ファン向けにイベントをリアルやオンラインでやることで、ファンは、作家のことを身近に感じることができます。「Patreon」というサイトもあるので、一般の人から定額でお金をもらいやすくなっています。日本だとオンラインサロンが同じような仕組みです。

ちなみに、アメリカでは、「9・97」ドルという数字が、お得な感じがして、申し込みやすい数字だそうです。日本では、「980」円というのが申し込みやすい値段なので、面白い心理の違いです。

 

(2)読者への本の直販

出版社を通さずに、さきほどのファンクラブ向けに本をリリースするというモデルです。

ファンにとっては、新刊が出版社から送られようが、著者から直接送られようが、関係ありません。むしろ著者からのほうが喜ばれるということもあるでしょう。実際、熱狂なファンが世界中にいるようなミステリー作家で、直販という方法を取っている人がいます。

出版社を通さなくていいので、報酬は、配送手数料を引いたら、すべて作家のものになります。印税率が10%だとしたら、同じ金額をもらうのに、売上部数は出版社のそれの10分の1でいいわけです。もし、売上部数が何分の1かに減っても、条件は格段によくなります。

ただし、これはある程度ファンが、一定数いる作家だから可能になるビジネスモデルです。普通の作家には、真似できるものではありません。

以前、コロナ禍のときに、私もオンラインで本田健書店というのをやっていました。1万人近い読者に毎月新刊を配信するという試みでしたが、さすがに毎月、新刊を書くのは大変すぎて、20ヶ月でやめましたが、面白い挑戦だったと思います。

 

(3)自主開催の講演、セミナー、企業研修(オンラインも含む)

これは、さきほどの(1)のコミュニティと一緒ですが、あなたの専門分野の知識をまとめて学びたいという人は、必ず出てきます。最初は、信じられないかもしれませんが、読者の中から、熱心な人が参加してくれます。私も、20年前からセミナーをやっていますが、最初は4人しか参加者が集まらず、焦った憶えがあります。

手軽に、2時間ぐらいの講演会を開催している作家もたくさんいます。無料、あるいは数千円の講演会に来てもらうことができるかどうかが、最初のステップです。講演会に来てもらって、もっと学びたいと思われるか、もうだいたいこの人の言いたいことはわかったと思われるかが、分かれ道です。

まずは講演会に参加してもらって、もっと学びたいという人が出てきた場合には、「一日セミナー」ができるようになります。慣れてくると、もっと大人数での開催も可能です。セミナーは、リアルでやることもできるし、オンラインでやることもできます。

一日セミナーは、数万円で開催されることが多いようですが、数百人が集まれば、売上も一日で、普通の会社員の年収ぐらいの金額になります。

教えるコンテンツがあるビジネス書系の作家なら、合宿セミナーというのも有りです。合宿形式なら、参加者同士が仲良くなるということが起きます。私も合宿セミナーを年に数回開催していますが、そこで出会った人たちが一緒にビジネスをしたり、結婚したりということがよくあります。

企業研修というのも、作家の隠れた収入源の一つです。ビジネス書系の作家はもちろんですが、文芸の作家でも、ある程度の有名な人なら、企業に招かれて講演をするという仕事があります。

ギャラはランクによりますが、10万円から200万円くらいまで幅があります。知名度があれば、30万円ぐらいはもらえます。それを週に1回ぐらいやれば、執筆で行き詰まったときのいい気分転換にもなるし、普通の会社員の月給を超えるぐらいの金額にはなります。

 

(4)認定コーチ制度

作家のやっていることをもっと深く学びたい人が、セミナーに参加してくれますが、そのうち、「その内容を人に教えたい」という人も出てきます。そのメソッドを体系化することができれば、その「教えたい人」も育てることができます。

これは、日本でも海外でもポピュラーなやり方で、自分の認定コーチを増やすモデルです。登録料も30万円ぐらいから、高い人だと300万円のところもあるようです。

仮に30人の申し込みがあれば、それだけで1億円近い数字にもなります。上手にブランドをつくって、認定コーチを展開すれば、結構な利益になります。

ただ、お金だけをもらって、その先の面倒をあまり見ない、というような中途半端なかたちでは、長続きしないようです。ネットでは、参加した人たちの感想が出ていたりしますので、いい加減なことはできませんね。

 

(5)個人面談、グループコンサルーティング、マスターマインド

(1)や(3)が、大人数なのに対して、これは、小グループでやるものです。オンラインでやったり、リアルでやったりします。一回きりのこともありますが、半年コース、一年コースで展開することもできます。毎月、参加者がオンラインで集まり、数ヶ月に一回くらいはリアルで会うというスタイルが多いようです。

世界のトップレベルの作家になると、マスターマインドの会費が、年間10万ドル(約1500万円)です。それだけ払える人は、すでに成功しているので、同じようなレベルの会員と交流できるというメリットも感じているようです。

毎回深いレベルの気づきがあったり、参加者同士でビジネスがスタートしたりとなれば、受講者にとっては、高い受講料も、あっという間に元が取れるという感覚で参加されているのかもしれません。そこまで有名でないのに、高額の参加費で、たくさん人数を集めている人の中には、コミュニティをつくるのが上手な人がいます。

「個人セッション」 というのは、30分とか1時間といった限られた時間に、その作家にいろいろ相談できるというものです。世間話をするだけでは成り立ちませんが、コーチングができる人は、高額な報酬につながる場合があります。相場はピンキリで、1回数十ドルから、数十万ドルまで開きがあります。

 

(6)世界を舞台にした、大人の遠足旅行

有名な作家と、世界中を一緒に旅するという企画です。これだと、文芸など、ジャンルに関係なく、どんな作家でもできると思います。実際、海外の友人の作家が、最近はよく日本に来るようになって、そうした会のゲストに呼ばれて話をする機会が増えました。

「ピラミッドで瞑想」
「マチュピチュ、セドナなどのパワースポットでエネルギーワーク」
「アフリカのサファリ、アマゾンの原住民の儀式を体験する」
「ヒマラヤの聖者に祝福してもらう」

......そんなツアーを友人たちがやっていますが、どのツアーも、面白そうですよね?

最近は、そういう旅行先に、日本の「TOKYO」とか「KYOTO」が入るようになりました。日本人にとっては、なんか嬉しい話ですね。

もともと行ってみたかったけど、いままでタイミングがなかった、そんなエキゾチックな場所に有名な作家と行ける。ここに、大きな魅力を感じるようです。プラス時間とお金が自由な仲間と行くのは、それだけで楽しい遠足みたいなものです。

似たようなビジネスモデルに、「ベストセラー作家と行くクルーズ旅行」というのもあります。昨年の2023年、私が講師として呼ばれたのは「アラスカクルーズ」で、2週間乗船して、その間に2回講演をするという契約でした。

2週間のクルーズは、講演以外の拘束はいっさいなくて、あとは自由にしていいとのこと。有名な講師が何人も乗船するので、そういうVIPとも知り合いになれるみたいです。

クルージングに招待されて、そのうえ講演料までもらえるなんて、「作家っていいなぁ」と思いましたが、スケジュールが合わず、泣く泣く辞退せざるを得ませんでした。

同じツアーで数年前に講演した友人の作家から聞いた話では、お客さんの質がとてもよくて、みなさん感じがよかったそうです。サイン攻めや質問攻めにあったら、逃げ場がないので、どうなのかなと思いましたが、そんな心配はいらないようです。

欧米のツアー会社によっては、そういう「文化人と行く旅」を積極的に企画しているところもあるようです。

 

(7)自分の店(飲食店やブックカフェ、ジュエリー、洋服)を開く

ベストセラー作家が自分の店を出すこともあります。飲食店やブックカフェなどは、わかりやすい例です。

これまでの自分の作品を並べて販売する、ファンが集まって、そこで交流できる場所としてのカフェを開くのは、とっても素敵だと思います。本好きが高じて、書店まで持ってしまうということなのでしょう。私も、いずれやりたいと思っていることの一つです。

趣味が高じて、自分の洋服やジュエリーのラインアップを売る作家もいます。なかには、アパレルメーカーを立ち上げて、本格的なビジネスになっている人もいます。そうなると、もう作家と言うよりは、実業家といったほうがいいかもしれません。

自分の店といっても、リアル店舗の場合もあるし、オンラインのみで販売するというのもありでしょう。一定のファンがいる人にとっては、いいビジネスモデルです。

ですが、普通のビジネスと同じで、油断するとすぐにダメになります。また、自分が書いていることと、お店で扱う分野が違いすぎると、せっかくの知名度が活かしにくくなります。

 

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発売日:2025年01月06日
価格(税込):780円

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