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スマホが学習ツールに...脳の性質も活かした「タイパ最強の勉強法」

2025年01月06日 公開

綾部貴淑(KIYOラーニング㈱代表取締役)

綾部貴淑氏

ビジネスパーソンが資格に挑戦するなら、できるだけ短期間で、そして一発で合格したいもの。KIYOラーニング代表取締役の綾部貴淑氏は、自身も会社員時代に働きながら中小企業診断士の資格を取得した経験を持つ。2度の挫折を含むその経験を活かし、脳科学や心理学の知見も踏まえて綾部氏が開発した、超効率的勉強法とは?

※本稿は、『THE21』2025年2月号の掲載記事より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

スキマ時間勉強の味方!デジタルツールの活用を

ビジネスパーソンが資格取得を目指すにあたっては、勉強時間の確保をはじめ、様々な課題が伴う。オンライン通信教育事業を手がけるKIYOラーニング代表取締役・綾部貴淑氏は、かつて自身が資格取得で苦労した経験から、効率的な学習メソッドを確立し、同社のコンテンツに反映させている。そんな綾部氏に、多忙な人が最短で最大の効果を出す勉強法をうかがった。

「まず、時間確保の方法からお話ししましょう。秘訣は、スキマ時間をとことん活用することです。昼休みや休憩時間、営業職の方なら移動中など。通勤時間も、長ければ往復で2時間程度確保できます。プラス、早朝もしくは夜に1時間勉強すれば、トータルで1日3時間。これなら難関資格も十分に目指せます」

近年は、スキマ時間を活用しやすい環境も整っているという。

「なぜなら、スマートフォンが学習ツールになるからです。デジタル書籍や学習用アプリ、当社のような動画の講座も見られます。最大の利点は、いつでもどこでもできること。立ったままでも操作できる、両手がふさがっていても耳で聞ける。つまり、スキマ時間で『ながら勉強』できるのです。仕事の合間のみならず、家事をしながら学ぶこともできます」

 

「学生時代の勉強」の逆を行く発想で

時間確保と同様に重要なのが、学習期間の短縮化だ。短期間で合格を勝ち取るには「逆算」で考えることが重要だ、と語る。

「よくある失敗は、テキストや問題集に『一から順に細かく』取り組むこと。かく言う私自身も、それで2度、中小企業診断士対策に挫折しました(笑)。3度目に合格できたのは、ゴールから逆算で考えたからです。ゴールとはすなわち、合格点を取ること。合格基準が6割なら、試験日までに過去問で6割以上取れる実力を備えるのが目標です。

それには、前段階で基礎問題や練習問題を解ける必要があり、さらにその手前で、テキストからの知識のインプットが必要......というふうに考えつつ、スケジュールを組むのが正解です」

ただしそのスケジュールは、「①テキストを読む時期→②問題を解く時期→③過去問の時期」といった、単純な順番ではない。

「初期から、この3要素のサイクルを素早く回しましょう。インプット後、すぐに問題を解く=アウトプットすることで、実力がつくからです。初期は①に重点を置き、徐々に②の問題のレベルを上げつつ、終盤は③に注力。比重を移しつつ、何度もサイクルを回すのがベストです」

早い段階から過去問にも取り組み、実戦感覚を養うことも大事だという。とはいえ、知識の少ない時期からハイレベルな問題に触れて、怖れをなす危険はないだろうか。

「そこも発想を転換しましょう。過去問に限らず、難しい問題に出合ったとき、解こうとするのは時間の無駄。すぐに解答と解説を見て、学ぶ機会にすればいいのです。『先に答えを見るなんてズルだ』という学生時代の思考グセはぜひ捨ててください」

 

脳の性質を活かした記憶のノウハウ

学習効率が飛躍的に上がる「学習マップ」

一方、インプットした知識を記憶に定着させたいときは、「学習マップ」の作成が役立つ(上の写真)。

「中心にテーマを置き、それを構成する概念を枝葉のように伸ばしたマップを描くことをお勧めします。これは、全体像を俯瞰しながら細部まで理解する、言わば体系の整理法。科目の全体像を知るにも、その中の一単元を頭に入れるにも便利です。

これは私が、脳科学や心理学の書籍を何冊も読んだ末に編み出した方法。脳は、情報同士を関連づけながら記憶する性質を持っています。思い出すときも、一つの事項を想起すると、その周辺情報も連想します。マップを使って覚えると、こうした連鎖的なアウトプット力、つまり『解く力』も上がります」

分野によってはマップ化しづらいものもあるが、その場合も、イラストや図を使ってイメージを喚起すると覚えやすくなるという。

「マップを見るときや教材を読むときは、目で追うだけでなく、人に説明するかのように声に出すと、より頭に入りやすくなります。『五感』のうち複数の感覚を同時に働かせると、より記憶に定着しやすくなるからです。視覚・聴覚・筋肉が動く体感覚の三つを並行させれば、脳は大いに活性化するでしょう」

 

オンライン学習ならコスパもタイパも良し

資格取得に向けては、「学校に通う」「自分で教材を買って独学する」「オンラインを含む通信教育を利用する」など、複数の形態がある。どれを選ぶべきかは個々人の適性によるところが大きい、と綾部氏。

「通学は、ある程度時間のある方、金銭的コストをかけられる方、対面で受講しないとモチベーションが続かない方に向いています。対して独学は、モチベーション維持に自信がある方向き。費用も最低限に抑えられますが、タイムパフォーマンスの点ではベストとは言えません。なぜなら、学習ノウハウや効率性の『正解』が見えづらいからです。

どこが試験によく出るか、どの順番で何を覚えれば良いか、などを自分で考えなくてはならず、学習そのものより、進め方で悩む時間がかかってしまうのです。では通信教育はどうかというと、通学より廉価で、進め方についても運営会社のサポートが得られ、タイパも良いと言えます。かつオンラインでの受講なら、前述の通り『いつでもどこでもできる』メリットも加わります」

最後に、モチベーションを維持するコツについても聞いた。

「一つは、『この資格に挑戦する』と周囲に宣言することです。知られてしまえば頑張らないわけにいかない、つまり退路を断つ作戦です。職場の人に言いづらければ、友人や家族に宣言すると良いでしょう。二つ目は、勉強仲間を作ること。通学はもちろん、オンライン通信教育でも受講者同士が交流できる仕組みを提供している会社もあります。

独学の場合も、SNSで発信すれば、同じ目標を持つ人がきっと反応してくれます。大いに励まし合い、悩みをシェアしましょう。そしてぜひ、試験の日まで完走しましょう。ここまでお話ししてきた勉強法は、結果に結びつきやすいのはもちろん、『学ぶ習慣』がつくのも大きなメリット。資格取得以降、さらに高いレベルの資格を目指したくなる可能性もあります。新たな知識とスキルを得て、これからのキャリアに活かしてください」

THE21 購入

2025年2月

THE21 2025年2月

発売日:2025年01月06日
価格(税込):780円

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