"情報弱者"と"意識高い系"、一見正反対に見える2つのタイプに共通する特徴とは? そして両者が、搾取ビジネスにハマりやすい理由とは? 巧妙な搾取の罠から身を守るために、注意すべきポイントについて、行政書士の服部真和氏による書籍『できる社長のお金の守り方』より解説します。
※本稿は、服部真和著『できる社長のお金の守り方』(秀和システム)より、内容を一部抜粋・編集したものです
搾取ビジネスにハマってしまう人が「情報弱者」と「意識高い系」に多く、両者とも裏を取ることが少ないです。この両者について、両極端な人たちと思われたかもしれませんが、じつは両者には共通点があります。
まず、世間的に「情報弱者」とされる対象の特徴は次の通りです。
①ちゃんと調べない
②見聞きしたことを疑わない
③入手する情報が偏っている
④すぐによさそうな話に飛びつく
次に、意識高い系とされる対象の特徴は次の通りです。
①勉強量が膨大
②得た知識をすぐに披露する
③セミナーや勉強会、オンラインサロンなどに積極的に参加
④向上心がある
「全然、違うじゃないか」と思われたかもしれませんが、よく見比べてください。
①勉強量が膨大→つねに情報や知識を吸収→(量が多すぎて)ちゃんと調べてない
②得た知識をすぐに披露する→知識や情報を信じやすい→見聞きしたことを疑わない
③セミナーなどに積極的に参加→入手する情報が偏る
④向上心がある→今よりもよくなりたい→すぐによさそうな話に飛びつく
もし、この話を「自分は意識が高い」と思っている人が聞けば、否定されるケースも多いでしょう。しかし、必ずいくつかは思い当たる部分もあるはずです。
正直に言えば、僕自身、どちらかと言えば「意識高い系」側に入ります。そして「入手する情報が偏っている」「すぐによさそうな話に飛びつく」あたりが否定できません。
みなさんも身の回りに「意識高い系」寄りの人がいたら、分析してみてください。なかには「自分も当てはまる」と、耳の痛い人もいるでしょう。しかし、僕自身もそうですが、搾取ビジネスに対してはまったく問題ありません。
大切なのは、自分を知った上で対策を練ることであり、何より有効な対策が「裏を取ること」なのです。本項では、具体的な裏取りの手法を中心に説明していきます。
2023年10月、景品表示法の規制類型に「ステルスマーケティング」いわゆる「ステマ」が加わりました。景品表示法とは、消費者が商品やサービスを選択する際に「広告やSNS」の記載を誤解して不利益を被らないようにするための法律です。このため、以降は広告やSNSなどの表示内容に、一定の規制がかけられています。
ステマとは、実際には商品やサービスを購入させようとしているのに、宣伝であると思われないように、商材に有利な文章を書くことです。「ステルス(こっそりとした)」「マーケティング(売る仕組み)」なのでステルスマーケティングです。法律で規制されるということは、よほど社会問題化していたということになります。
実際、モデルやタレントなどの著名人やインフルエンサーが、企業から対価をもらっているにもかかわらず、それを隠して宣伝することが横行していました。「権威性」の効果が(しかも宣伝と思わない油断した状態で)発揮されるわけです。さらに、多くの著名人も気に入っているという「社会的証明」の効果もあり、騙し討ち度の高い売り込みだったわけです。
近年は、とくに多くの人が商品やサービスに関して、レビューや口コミをよく参考にします。これらは普通、商材を実際に使った人の正直な意見だから、役に立ちますし、信じ込みやすいのです。
しかし、もし信じていた口コミが、じつは広告だったらどうでしょう? 通常、広告とわかっていれば、誰でも評価内容をいくらか差し引いて捉えます。
しかし、まるで普通の口コミのように宣伝すると、本来持つべき慎重さを持たずに判断してしまうわけです。
法律で規制されたことで、騙し討ちとなるステマはできなくなりました。利害関係のある者が宣伝する場合、必ず宣伝やPRであることを明示しなければなりません。とはいえ(誰が発信しているものでも)いったん冷静に「裏を取る」ことの重要性は変わりません。
「情報弱者」や「意識高い系」ではない人でも、隠れた罠に対する注意が必要です。
人は現状維持が続くと、思考停止に陥って、思わぬ搾取ビジネスの被害にあうことがあります。
一方で、状況の変化に直面すると、無意識に不安が生じ、また様々なあおりに惑わされることもあります。
これらは、いずれも自分に起因して生じるリスクですが、現代においては環境によって生じるリスクも潜んでいます。近年、テクノロジーの進化や市場の変化が、非常にスピーディとなっています。
それらは一見、人間にとって素晴らしいことに思えます。しかし、そのことで必ずしも、すべての人が恩恵を受けるとは限りません。
テクノロジーの急速な進化は、その進化に適応できる一部の「使いこなせる人間」が恩恵を得ることになります。市場の環境も同様で、その変化の波にうまく乗れた人間だけが利益を得ることができるのです。
つまり、テクノロジーの進化や市場の変化のスピードが加速すればするほど、格差社会も加速度的に広がるということです。
このような状況になると、必然的に「成功や利益を求め、必死に進化や変化に乗ろうとする層」と「成功や利益を追わず、気にしないで生きる層」に分かれていきます。
前者は、乗り遅れたくないという強迫観念が無意識に働き始めます。「対応する努力を止めたら何もできなくなるんじゃないか」とか「どんどん落ちぶれていくのではないか」といった具合にです。
そうすると「情報弱者」や「意識高い系」同様に「情報を追いかけられない(調べてない)」「見聞きしたことを疑わない」「入手する情報が偏る」「すぐによさそうな話に飛びつく」という状況に陥ってしまうのです。
更新:11月21日 00:05