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40代が生き残るために「徹底的に仕事を減らす」べき理由

2012年08月06日 公開
2022年12月27日 更新

山本真司(経営コンサルタント)

山本真司氏

多くのビジネスマンが「変わらなければ」という漠然とした焦燥感にとらわれる40代。しかし、具体的に何が問題でどう変わればいいのかは、なかなかみえてこない――。

経営コンサルタントの山本真司氏は、40代のビジネスマンが会社に求められることに対して「何をやるべきか」について、具体的に解説する。

※本稿は『THE21』2012年8月号より、一部抜粋・編集したものです。

 

「できる人」の定義が40歳を境に変わる

いまの40歳というと、入社したのは1990年代の後半。最初の就職氷河期世代で、上にはたくさん人がいるけれど、採用抑制で後輩は少ない。だから役職に就いても部下がいない、という人もいるでしょう。

ですから、この世代の第一の特徴はとにかく忙しいこと。任される仕事の量は10年前の40歳と比べるとはるかに多いと思います。

2つ目に、初めて日本の本格的成果主義が始まった世代なので、「マイナス評価がつくと出世や給与に露骨に響く」「ミスをしちゃいけない。競争に勝たなくてはいけない」という刷り込みがとても強い。ミスを恐れながら、つねに“テンパッて”仕事をしている。

これだけでも厳しいのですが、40代にはさらにもう1つ大きな課題があります。30代までは与えられた仕事をうまくさばいていればいい。

だから、30代の出世頭というのは、よく仕事をして数字を挙げて、みんなに可愛がられて、他部署との調整もうまくて……という人ですよね。つまり、いかに仕事をするか=『how』を考えていればよかった。

ところが、40代に入ると仕事の質が変わる。経営人材として、何をやるか=『what』を考えることを求められるのです。

とくにここ数年は、企業の社員に対するニーズが変わってきています。環境の変化があまりに激しいため、いままでのやり方では通用しない。この傾向は業界を問いません。

普通にやっていては、徐々に業績が低下してしまう。そんななかでも業績を挙げているのは、ユニクロに代表されるような、新しくて面白いビジネスを次々と生み出しているプレイヤーです。

変化への対応が求められるとき、いわれた通り仕事をする人、つまり過去の延長線上で仕事をする人は、あまり必要とされない。企業は新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造するクリエイティビティある人材を本気で求めている。つまり、『what』を考えられる人材です。

いってみれば、40歳を境に『できる人』の定義が変わるということです。ビジネスマンとして生き残ろうと思うなら、40代からは『What』を考えられるようにならなくてはいけない。にもかかわらず、実際には目の前の仕事に忙殺され、ミスがないようにこなすだけで手一杯。

勉強する余裕もないという人が大半では。会社が求めることと、現実に置かれている立場のギャップは非常に大きい。それが、現在の40歳を取り巻く状況だと思います。

 

生き残るためには「大転換」しかない

会社が安泰だった時代なら、先輩の背中をみていれば自然とリーダーとして必要なことを学べた。あるいは、無理に出世をめざすのではなく、現場の優れたマネージャーとして勤めあげる選択肢もあっただろう。

しかし現状は厳しい。一定年齢以上で「what」を考えられない人材に居場所はない。

だから、40代から仕事で伸びるには、意識的に変わるしかない。それも、コンピュータのOSを入れ替えるくらいの『大転換』が必要。具体的には次の5カ条を心掛けるべきです。

(1) 『 how 』 から 『 what 』へ
先ほどもいったように、与えられた仕事をやり切るだけでなく、何をやるかを考えられるようになること。『この事業部をどう変えていくか』『いかに新しい付加価値を創造するか』といったことを構想できる人材でなくてはいけないのです。

(2)『学習」から『再統合・創造』へ
30代までに受動的に学んだ知識を、40歳からは自分なりに再統合し、それをベースに独自の主張ができるようになること。40代では、自分の主張がある人と、受け売りしかできない人では明らかに差がつきます。

(3)『自分でやる』から『人を動かす』へ
新しい発想ができても、人に影響を与えて動かさなくては、何も実現できません。

(4)『マネージャー』から『リーダー』へ
すでに部下がいるという人でも、与えられた仕事を部下に指示してやるだけでは『マネージャー」です。経営人材になるためには、ビジョンを描き、戦略を組み立てて周囲を巻き込む『リーダー』に変化する必要があります。

(5)『中を向いた活動』から『外を向いた活動』へ
上司に評価される、他部署と調整する、といったことは確かに大切ですが、それだけでは新しい価値を創造できません。顧客、競争相手はもちろん、世の中全体に広く目を向けて自分の幅を広げていく必要があります。

50代以降、経営幹部として登用される人というのは、この5ヵ条の『大転換』がうまくいった人のこと。要は、会社の新しいビジョンを提示でき、戦略も立てられて、それに合わせて組織全体を変えていけるチェンジマネジメントができる人です。

いまのような時代には、そういう人でなければ40代以降は『できる人』とはいえない。経営陣の世界に足を踏み入れられるかどうかは、『大転換』の成否で決まるといっていいでしょう。

それは同時に、いまの会社の外に仕事を求めなければならなくなったとき、どこにいっても通用する能力でもあります

 

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著者紹介

山本真司(やまもと・しんじ)

経営コンサルタント、〔株〕山本真司事務所代表取締役

1958 年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)勤務。シカゴ大学経営大学院(ブースビジネススクール)修士。名誉MBA (MBA with honors) 取得、ベータ・ガンマ・シグマ(全米成績優秀者協会)会員。1990 年にボストン・コンサルティング・グループ東京事務所に転じる。以降、A.T. カーニーマネージング・ディレクター極東アジア共同代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを経て2009 年に独立。現在、株式会社山本真司事務所、パッション・アンド・エナジー・パートナーズ株式会社代表取締役、立命館大学経営大学院客員教授、慶應義塾大学健康マネジメント大学院非常勤講師などを務める。
著書に、『会社を変える戦略』(講談社)、『儲かる銀行をつくる』(東洋経済新報社)、『40 歳からの仕事術』(新潮社)、『35 歳からの「脱・頑張り」仕事術』(PHP研究所)、共著に『ビジネスで大事なことはマンチェスター・ユナイテッドが教えてくれる』(広瀬一郎氏との共著、近代セールス社)など多数。

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