40代からの転職に成功する人、失敗する人の条件は多々あるが、特に大企業にずっと勤めてきた人に特有の問題があるという。それが、知らず知らずのうちに身についた「上から目線」と、転職市場の現状を知らないがために「辞めてから転職先を探し始める」ということ。
早期退職制度の導入が相次ぐ中、後悔しないために知っておくべきこととは? ミドル専門転職コンサルタントの黒田氏に伺った。
Dさん(43歳)は、大手自動車部品メーカーで購買課長として働いていました。業績が振るわず、外資系企業の資本が入ってリストラが行われることになり、早期退職制度に応募して退職。当時の年収は約1200万円でした。
購買の仕事を長く続けてきてご経験も豊富だったこともあり、これまでと同じ購買の仕事を探されておられました。希望年収は、ご本人としては、かなり思い切った譲歩をして「最低1000万円。企業規模は前職企業より小さくなっても仕方がない」ということでした。
Dさんにお会いしたとき、最初に感じたのが、微妙に「上から目線」なコミュニケーションでした。もちろん、面と向かって失礼なことを言ったり、礼儀がなっていなかったりという非常識さではありません。
しかし、たとえば「小さな会社でも仕方がない」というささいな言葉や、人材育成や顧客との関係性などの考え方の端々から、「このまま面接に行ってしまうと印象が悪くなりかねない」という違和感を覚えたのです。
大企業で長く働かれて、役職者としての期間も長く、評価されることよりも人やサービスを評価することに多くの時間を使ってきたため、自己PRや売り込みが不慣れを通り越して不向きになってしまっているという印象を強く受けました。
一方、転職マーケットの下調べなどはほとんど手つかずで、ご自身の市場価値についても大変強い自信があるご様子でした。当日は、過去の業務上のエピソードや人材育成のポリシー、ご希望条件をじっくりお伺いして、ご希望に沿った求人が見つかり次第、ご連絡することを約束してお別れしました。
なかなかご希望に沿える求人が見つからないまま、時間が経過していたのですが、半年後にDさんから再面談のご依頼をいただきお会いしました。内容は「希望条件を少し変更したので、お伝えしておきたい」ということでした。
半年間の転職活動状況をお伺いすると、転職エージェント経由で紹介された求人はどれも自分の希望条件を満たさないものばかりで、ほとんどエントリーすることもなく、結局、ご自身で求人サイトを見て探すようになっているとのお話でした。
購買や総務の求人を中心に十数社に応募したものの、ほとんど書類選考を通過することがなく、1社だけ面接まで進むことができた企業があったそうですが、実際の給与月額が、求人広告に掲載されていた給与例より大幅に低かったために、ご自分から辞退を申し出たとのことでした。
本題の希望条件の変更内容は、もともとの希望年収額だった1000万円以上という条件を生活の必要最低金額を見直すことで最低年収を600万円に下げ、希望しておられた購買の仕事に限定せず、自分にできることならなんでも検討する、と変更されたとのことでした。
ご自身なりに大幅に条件を見直し、敷居を下げる意思決定をされたので、選択肢は大幅に増えましたが、Dさん自身の「あまり条件を広げすぎると、逆に迷ってしまいますね」という言葉通り、なかなか的が絞れないと悩まれておられました。私からは、これまでのご経験と親和性が低い営業系の仕事を除いて検討されることをお勧めしました。
更新:12月10日 00:05