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年金の受給時期は“後ろ倒しがお得”...60代から必要なお金の算出法

2023年08月28日 公開

井戸美枝(ファイナンシャルプランナー)

老後資金はいくら必要なのか

「60代からお金の自由を手に入れるために、必要なお金は人それぞれ。自分なりの資産運用の出口戦略を考えておく必要がある」と、人気ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝氏は語る。お金の余裕が持てるかどうかの分かれ道となる、退職金や持ち家などの失敗しない運用法とは?

※本稿は、『THE21』2022年9月号特集「普通のサラリーマンが60歳までに『お金の自由』を手に入れる方法」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「緩んだ財布」のまま55歳を過ぎると危険!

60代から不足するお金の算出方法

60代から「お金の自由」を手に入れるためには、どれくらいの金額が必要なのでしょうか。それを単純な数字で表すことは、実はなかなか困難です。

話題となった「老後2000万円問題」も、高齢夫婦無職世帯の「平均収入」から「平均支出」を引いた不足額から算出したもので、すべての人に当てはまるわけではありません。そこで必要となるのは、「自分の」資産や家計の状況から割り出すことです。

まず、60代での月々の生活費×12カ月に、年単位の出費をプラスして、年間の生活費を確認します。月々の生活費は、現在の生活費の7割程度にする工夫をして計算しましょう。

その年間生活費から、将来もらえる年金額を差し引き、60歳からの余命の目安となる30年をかけると、生活費のおおよその不足額がわかります。

生活費の他、高齢期に入れば医療費・介護費もかかってきます。その平均額がおよそ830万円。その他の諸費用含め1000万円、と考えてそれもプラス。これで、必要総額がだいたいつかめるはずです。そのうえで、今の「お金の使い方」について見直しましょう。

50代前半の方々の多くは、教育費も一段落し、住宅ローン返済の目途も立つ頃です。給料もこの時期ピークを迎えるので、現在に限って言えば、余裕のある方も多いでしょう。

しかし55歳を過ぎると、役職定年などで収入が下がってくる方も多いもの。このとき、一度緩んだ財布のひもを締められるかどうかが、重要な分かれ目です。

月々50万円以上の支出があるなら、少々危険。私が相談にのっている世帯でも、ジム通い(パーソナルトレーナーつき)、高額なビタミン剤など、無駄な出費のある世帯が多くあります。

保険のかけすぎや、無駄な通信費もカットのしどころ。ほとんど利用していないサブスクの配信サービスなどは解約し、できればアカウントも夫婦で1つにするのが望ましいでしょう。これらの細かな無駄削減によって、月々2~3万円ほどの余剰を作るのは難しいことではないでしょう。

 

「退職金と住まい」の本当に正しい使い道とは?

「退職金」と「家」についても注意が必要です。退職金を受け取ったら「これで住宅ローンの残りを返そう」「家をリフォームしてゴージャスにしよう」と考えている方、それはNGです。

退職金は何かに大きくつぎ込んだりせず、後々に備えて運用するのがベスト。定年から年金受給までに空く「間」を乗り切るときの備えとしても、欠かせないものです。

ちなみに年金受給のタイミングは、うしろ倒しにするほど先々お得。年金受給は65歳になるときから請求できますが、これを1カ月遅らせるごとに受給額が0.7%ずつ増え、受給開始後、その金額を一生受け取れます。だからこそ「間」を多く取ることを前提に、退職金の無駄遣いは避けるべきなのです。

家についても、「この家にずっと住むか否か」を考えましょう。子どもたちが独立したあとの広い家に二人だけ、という暮らしは決して快適とは言えないはずです。身体も年を重ね、戸建てならば「階段がつらい」といったことも出てくるはずです。

ならば家を売却し、コンパクトな暮らしに切り替えることも視野に入れるべきです。

向こう何年住むかわからない家をリフォームするのではなく、「いつまで住むか、いくらで売れるか」と出口を考える視点があれば、資産価値を損なわないように綺麗に住む、というふうに、計画性を持って暮らせるようにもなります。

60代での暮らしのイメージを描き、そこから逆算して必要な出費・不要な出費を見極めていけば、これからのお金との向き合い方が、自然に整理されていくでしょう。

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著者紹介

井戸美枝(いど・みえ)

ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士として数多くの相談にのる他、講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じて、身近な経済問題、および年金や社会保障問題などについて平易に解説を行なっている。著書に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください! 増補改訂版』(日経BP)など著書多数。

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