――お金や投資について真剣に考えている人とそうでない人では、人生はどう変わると思いますか?
【厚切り】現役で働き続けている間は、そんなに変わらないかもしれませんが、無駄遣いを見直して、その間ずっと積み立て投資をやってきた人と、まったく何もしてこなかった人とでは、老後にとんでもなく大きな差がつくでしょうね。
僕の本の読者から、「積み立て投資を始めました」とか「自動販売機でペットボトルの飲み物を買うのをやめて、マイボトルを持ち歩くようになりました」なんて報告をもらうことがありますが、投資を始めて数年くらいでは、そんなに増えた実感はありません。
でも、20年、30年経ったら、どうなると思いますか?
例えば、無駄遣いをやめて浮いた10万円を年利5%の複利で運用できたとしたら、1年後の利益は5000円ほど。だけど、そのまま30年間放置して運用を続けたら、43万2194円になる。元金の10万円が4倍以上になる計算です。とんでもなく大きいですよね。
コツコツ積み立て投資を続けてきた人は、引退後も現役の頃と同じくらいのお金の使い方ができると思います。
だけど、年金だけしか頼るものがないと、生活水準を落とさなくてはいけない。それまで節約してこなかった人が、急に節約しなければならなくなる。これは、かなりしんどいことだと思います。
今の生活をずっと続けても大丈夫だという安心感は、それだけですごく価値がありますよね。
僕は今、芸能界で仕事をしていますが、この世界はコントロールできないことばかりです。1年後に人気がどうなっているのか、仕事があるのかどうか、まったくわかりません。
資産が充分にあるからこそ新しいチャレンジができるし、目の前の仕事に集中できる。不安定な世界で人生をコントロールできている感覚を持てるのは資産のおかげです。
経済的な自立をしたことで一番良かったと思えるのは、安心と自由のフリーパスポートを得たという感覚かもしれません。
――これから資産を使う予定はあるのでしょうか。
【厚切り】もちろん必要になったときには使っていきますよ。でも、もともと物欲はないし、欲しいものはほとんど手に入ったと思っているので、今のところは大きなお金を使う予定はありません。
それに、「資産があるなら使わなきゃもったいない」と考えること自体が、無駄遣いの定義そのものじゃないですか。別に使わなくてもいいんです。僕はすでに資産から多くの効用を得ているので。
数年後、3人の娘たちが大学に進学するときに大きなお金が必要になるかもしれないし、将来もしかしたら彼女たちが「起業したい」なんて言うかもしれない。今はどうなるかわからないけれど何かあったときに柔軟に対応できるのもお金の力だと思います。
【厚切りジェイソン(あつぎりじぇいそん)】
IT企業役員・タレント。1986年、アメリカ・ミシガン州生まれ。17歳でミシガン州立大学に飛び級で入学。卒業後、イリノイ大学大学院に進み、修士課程を修了。タレントとして活動しながら、IT企業の役員も務める。著書に『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ)などがある。
(『THE21』2023年9月号特集「インフレ時代の『お金』の新常識」より)
更新:12月04日 00:05