上の図のように、不動産投資は大きく8つの形に分けられます。まず「一棟」か「区分マンション」かですが、初めて不動産投資をする場合であれば、比較的手が出しやすい「区分マンション」への投資がお勧めです。
「一棟」への投資のほうが、収益はより大きいですが、当然必要な資金もリスクも高くなります。
「新築」と「中古」については、価格がこなれた「中古」を選ぶほうが堅実です。また「都心」と「地方・郊外」では、人口の増加が続いて賃貸ニーズが大きい「都心」のほうが有利でしょう。
ただし物件価格は高くなりますから、大阪や福岡といった賃貸需要の比較的高い都市で良い物件を探す選択もあると思います。
では、どのように物件を見極めたらよいのか。都心で中古の区分マンションを買う場合には、下の表に挙げた「7つのポイント」を重視するとよいでしょう。
不動産投資の最大のリスクとは、入居者が決まらず家賃収入が途絶える「空室リスク」です。これらの条件を満たしている物件ならば、そのリスクを極力抑えることができます。
不動産投資について「大儲けできるのでは」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、インカムゲインを目指す不動産投資は地道で堅実な資産形成法です。
区分マンションの家賃は都内でも10万円前後が多く、家賃から借入金の返済と管理費などの諸経費の支払いをすると、収支はとんとんというのが一般的です。物件によっては月々のキャッシュフローが数千円程度のマイナスになる場合もあります。
月々数万円のマイナスでは問題がある可能性大ですが、数千円程度のマイナスなら必ずしも失敗というわけではありません。
仮に、2200万円の物件をフルローンで購入して、月々の収支が2000円のマイナスだったとします。それでも、毎月きちんと家賃が入って借入金が返済されていき、20年で無事完済できたとしましょう。
物件価格を算出するにあたり、一般的に金融機関は収益還元法による評価を重視します。
20年後の家賃や管理費などの諸経費がどのくらいかにもよりますが、2200万円で購入した物件が20年経過後も1000万円を超える評価額を維持している可能性は大いにあります。昨今の世界的なインフレの加速を勘案すれば、それ以上の場合もあり得るでしょう。
20年で1000万円を貯めるには、月々4万円強の貯金が必要です(利息はゼロと仮定)。それに対して、月々2000円の負担で1000万円超の物件を手に入れることができるのであれば、投資妙味があると言えるのではないでしょうか。
これはかなり大まかな収支シミュレーションとなりますが、不動産投資をするにあたり、将来のインカムゲイン以外の投資メリット(生命保険の代替やインフレヘッジなど)があるのか確認し、事前にしっかりと考えることが重要です。
不動産投資に限らず、自分で学ぶ意欲の高い人ほど、投資を通して成長していることが多いもの。まずは、将来どのようにありたいかの目標を設定し、それを達成するための自分の「型」を見つけることが、成功への第一歩であると思います。
【山本尚宏(やまもと・なおひろ)】
(株)WonderSpace代表取締役
1982年、神奈川県生まれ。2006年、東京大学理学部数学科を中退。在学中に司法試験の勉強を開始(短答式試験合格)。その後、オーセンスグループ(株)(現・弁護士ドットコム(株))などを経て、2014年、(株)不動産投資の教科書を設立。投資家に「本当に良質な不動産会社だけをお勧めする」という経営理念のもと、業界の健全化に貢献すべく日々奮闘中。著書に、『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
(『THE21』2023年9月号特集「インフレ時代の『お金』の新常識」より)
更新:11月23日 00:05