大手企業で16年間研究開発の仕事に携わり、順風満帆な人生を歩んでいた、もふ氏。会社が破綻しそうな赤字になったのを機に、自分で稼ぐ力の必要性を痛感。
仕事を効率化して、生み出した時間で、不動産投資やYouTubeを始め、大きな成功を収めた。その成功があったのは、自身がサラリーマン時代に努力して培ってきたスキルのおかげだという。(取材・構成:坂田博史)
※本稿は、『THE21』2022年10月号特集「人生が変わる『整理術』」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
2008年のリーマンショックのとき、私は将来への不安を強く感じました。それまでは、大手メーカーで研究開発を行い、技術的に世界初となる半導体の製品を世に送り出すなど、仕事はやりがいがあり、充実していました。だから、当時は貯金が300万円ほどしかなくても、特に将来に危機感を抱くこともありませんでした。
ところが、会社がリーマンショックで大赤字を出し、残業は禁止に。賞与も最低額となり、「自分で稼ぐ力を身につけなければ将来どうなるかわからない」と痛感。それから英語やプログラミング言語の勉強などを始めたりもしましたが、ただもがいているような状態が続きました。
不動産投資を始めたのは、2014年です。自宅マンションを購入したのをきっかけに、不動産投資に関する本を100冊以上読み漁りました。区分マンションが儲かるという本や、ボロ一戸建てがいい、一棟買いがいいなど、主張は千差万別。
それらの中から当時、私が注目したのは「利回りの高い物件」です。不動産価格が1000万円で年間の家賃収入が200万円なら、利回りは20%。これを基準に物件を探し、築20年のアパート1棟を購入したのが最初です。
私は、不動産を持つことは「投資」ではなく、「事業」だと考えています。もし、「株式投資をしたいから1000万円貸してほしい」と言っても、銀行はお金を貸してくれません。不動産は「事業」だから、銀行も融資してくれるのです。
実は、社会人になりたての頃、上司に勧められて、IBM再建で有名なルイス・ガースナー氏の著書『巨象も踊る』(日本経済新聞出版)を読み、「いつかは自分も経営者になりたい」と思っていました。
不動産投資(事業)は会社経営を学べます。自分で物件を探し、購入するために融資を受けるのはファイナンス。家賃をいくらに設定するか、常に満室にするためには何をすべきかなどを考えるのはマーケティングの領域です。
不動産投資を始めたのは、「自分で稼ぐ力を身につけたい」「会社を経営してみたい」という2つの目的がきっかけとなりました。
不動産投資で大きな利益を得られるようになり、会社員を続けながら、15年には自分の会社を設立しました。さらに、新しいことに挑戦したいと考えたのですが、本業の残業が年間900時間くらいあり、まったく時間がありませんでした。
そこで、定時に帰るために始めたのが、「業務の効率化」です。例えば、仕事でエクセルにデータをひたすら打ち込む作業がありました。人間が行うと、どうしても入力ミスが起こり、間違うと上司に怒られます。
自動入力できるようにシステム化を依頼したら、「できない」と言われ、それなら自分でやってやろうと、システムに詳しい人を見つけて教えを請い、自動入力システムを開発して、業務の大幅な効率化に成功しました。
様々な業務の効率化と組織としてのアウトプットも増やし、17年には定時で帰れるまでになりました。そこで生まれた時間で始めたのがブログです。きっかけは、不動産投資の基本的な知識や正しい情報を多くの人に伝えることで、不動産投資で失敗する人を1人でも減らしたかったから。
当時、「かぼちゃの馬車事件」(高利回りの家賃収入保証を謳い、投資家から資金を集めていた不動産運営会社が、経営悪化により破産。投資家が多額の負債を負った事件)がニュースになっており、「不動産の価値とビジネスの仕組みがきちんと理解できていれば、正しい判断ができたはずだ」と考え、事件の解説記事なども書きました。
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更新:11月21日 00:05