マネジメントの基本として「部下を指示し、管理すること」を挙げる人は多くいるだろう。しかし、立命館大学ビジネススクール教授の山本真司氏は、部下を管理するのではなく、「自発性」を引き出すことがマネジャーにとって重要だと語る。山本氏が自身の経験から学んだ、現代の企業に必要なマネジメントの手法について紹介する。
※本稿は山本真司著『チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)から抜粋・編集したものです。
私は新卒で入った銀行を退社後、コンサルティングファームに入社した。そして、入社1年目でいきなり大きな成果を上げ、高い評価を受けることができた。
しかし、その後の3年間は逆に「史上最凶のマネジャー」と呼ばれ、評価は急降下してしまった。
なぜなら、コンサルティングの最終成果物は良いものになったが、そこに至るまでの過程が自分にとっても部下にとっても辛すぎるものだったからだ。
私は自分と同じレベルの仕事を部下に求め、具体的な指示を出すのではなく、あくまで部下の自主性に任せて仕事を進めた。しかし、部下の仕事レベルはなかなか、私を満足させるようなものにはならない。その結果、毎日毎日、私もメンバーも朝から晩まで駆けずり回り、疲弊していった。地獄のような日々の連続だった。
私をよく知る上司からは、「山本は、一人で働かせると史上最強の兵士。しかしながら、誰かと働かせると史上最凶の指揮官」と言われた。私自身、その通りだと感じていた。
その後、私は別のコンサルティングファームに転職した。次の会社では失敗できない。そこで私は今までとは対照的な「究極の一人プロジェクト」方式を導入した。
このやり方は単純だ。すべての仮説を早め早めに自分で作り、ワークプランに落とし込んで、綿密にメンバーの作業分担を決める。そして、仮説作り、情報収集、分析、報告書の作り方まで懇切丁寧に指導する。Plan-Do-Seeは綿密に行い、必要な指示、対策も与えていく。メンバーの仕事の進み具合が悪ければ、自ら乗り出して遅れを解消する。
最初はうまくいっていたが、これまたしばらくすると、思うように進まなくなってしまった。すべてを私がやらなくてはならず、部下は全員指示待ち。A君に指示を出していると、その後ろではB君が待っている。そして、その先にはCさん、D君が...。
部下はそのほうが楽だから、文句は言わない。だから、かつて「史上最凶のマネジャー」と言われたときと比べ、部下との関係は良好だった。
しかし、自分の仕事がいつまでたっても終わらない。それは当然の話で、部下の仕事はすべて私が手取り足取り指示するのだから、いくら時間があっても足りない。しかし、部下は自発的に動こうとせず、忙しい私をただ外から眺めているだけだった。
ある大規模プロジェクトでは、直接指導すべきメンバーが多すぎて、朝から晩まで彼らの仕事を確認し続けても終わらなかったこともある。重要な顧客との打ち合わせに出席する時間も取れず、メンバーからの相談に応じる暇もなかった。
更新:11月23日 00:05