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残業続きの人は“常に酩酊状態”かも...精神科医が説く、睡眠不足の悪しき影響

2023年06月05日 公開

樺沢紫苑(精神科医)

 

「疲れたから休憩」は効果なし!

休憩に関しても、誤解や間違いが多々見受けられます。まず、休むことへの罪悪感を捨てましょう。集中力維持のためには、こまめな休憩が不可欠です。60~90分ごとに、10~15分の休憩をはさむ、というリズムを意識しましょう。

そしてもう1つ改めるべきは、「疲れたら休む」という発想です。最新の研究では「疲れてから休憩しても、活動前のレベルまでは回復しない」ことがわかっています。疲れてからでは、たとえ1時間休んでも、体力や集中力は最初の状態には戻らないのです。

したがって、「疲れたら休む」を繰り返せば繰り返すほど、集中レベルはどんどん目減りしていきます。「疲れる前に休む」を徹底しましょう。

休憩中にも落とし穴はあります。この時間にスマホを見ると、休息は台無しになります。脳の作業の8~9割は、視覚情報の処理に充てられます。仕事中にPC画面や資料を見て、さらに休憩中までスマホ画面を見ていたら、目も脳もさらに疲れ果てます。

長時間のスマホは「物忘れ」の原因にもなります。ボーッとする時間を持たないと、脳は情報を整理する余裕がなくなり、記憶が定着しない。物事を覚えられなくなるのです。この「スマホ認知症」を防ぐためにも、休憩中は別のことをしましょう。

例えば、周りの人とコミュニケーションを取ること。それも仕事と無関係な、たわいない雑談がベストです。仕事モードをいったん離れる→また戻る、と緩急をつけることで、集中力は格段に高まります。

 

1分で簡単にできるお勧めのリラックス法

前述の通り、集中力は朝~午前中が高く、午後以降は下がります。人によっては、昼頃に眠気が出ることもあります。その場合は、ランチ後に20~30分ほど仮眠をとりましょう。

1日30分以下の仮眠には、心臓病やアルツハイマー病のリスクを下げるなど、高い健康効果があります。ただし、1時間を超えると健康効果はむしろ下がり、脳の働きも悪くなります。

ですから、仮眠を取るならあくまで短めに。1~5分でも回復効果はありますし、眠らずに目を閉じるだけでも有効です。光を遮断することで、脳の興奮を鎮められるからです。

ちなみに私はよく、目薬をさしたあと、こぼれないように上を向き、目頭を押さえて1分なじませる、という方法を取ります。わずか1分で簡単にできる、お勧めのリラックス法です。

 

著者紹介

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)

精神科医

1965年札幌生まれ。91年札幌医科大学医学部卒。2004年から米イリノイ大学に3年間留学。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通じたメンタル疾患の予防」をビジョンとし、累計フォロワー80万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報を発信。シリーズ累計90万部を突破した『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)、近刊『マンガでわかる『神・時間術』』(KADOKAWA)など40冊以上、累計発行部数230万部超の著書がある。

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