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「余剰人員に任せればいい...」インサイドセールを軽視する日本企業の末路

2023年05月26日 公開
2024年12月16日 更新

庭山一郎(シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役)

 

日本で起きたインサイドセールスの負の側面

社内の評判を落としたインサイドセールス部門は、社内のデータにコールできなくなります。それでも部門存続のためにコールという唯一の仕事をしようと、四季報や企業信用調査企業のデータや、検索して収集した企業サイトの電話番号リストなどを使って電話をかけることがあります。

そのように追い込まれたインサイドセールス部門の人にとって、Webから資料をダウンロードした人のデータは絶好の的であり、そのデータを基に死に物狂いで猛烈な電話攻勢をしかけます。

そうなると「うっかりあの会社の資料をダウンロードすると後からの営業電話がものすごいから気をつけた方が良いよ」という評判が立つことになります。こうした評判が立ってしまうと、広報まで巻き込んだ大問題に発展することがあります。

実はこれが、この5年間で日本のBtoBマーケティングで起きたインサイドセールスの負の側面です。

 

「余剰人員でインサイドセールス部門をつくる」という危険な発想

ではなぜ、BtoBマーケティングにとって必要不可欠なインサイドセールスが、このような不適合を起こすのでしょうか。

それは、インサイドセールスを軽視していることが原因です。企業によっては、「ある程度の製品知識を持っていれば誰でも電話をかけることができる」と簡単に考えていますので、真っ先に内製化の候補に挙がるのがインサイドセールスです。

中には「余剰人員にやらせる」と乱暴に考える企業さえ存在します。余剰人員がコールドコールをかけると聞いて喜ぶマーケティングも営業もいないでしょう。

インサイドセールスはうまく適合させることができれば、サッカーのポジションで例えるとトップ下、営業の司令塔の役割を担うことができます。

そのようなADRやBDRと呼ばれる専門組織に進化させるか、社内のマーケティングからも営業からも顧客からも嫌われる迷惑集団にしてしまうかは、企業のマーケティング偏差値にかかっています。

マーケティング戦略の全体設計をせずに、とりあえず組織をつくったとしたら、そんな組織が売上に貢献することなどあり得ません。経営者は肝に銘ずるべきでしょう。

 

【庭山一郎(にわやま・いちろう)】
1962年生まれ、中央大学卒。1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。
1997年よりB2Bにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。海外のマーケティングオートメーションベンダーやB2Bマーケティングエージェンシーとの交流も深く、長年にわたって世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。
年間で150回以上に及ぶセミナー講師や、ノヤン先生として執筆している『マーケティングキャンパス』等、多数のマーケティングメディアの連載をとおして、実践に基づいたマーケティング手法やノウハウを、企業内で奮闘するマーケターに向けて発信している。ライフワークとして、ブナの植林活動など「森の再生」に取り組む。

 

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