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「聞こえづらい、匂いがしない」は注意が必要...40代から始める認知症予防

2023年03月27日 公開
2024年12月16日 更新

浦上克哉(鳥取大学医学部教授、日本認知症予防学会代表理事)

 

有酸素運動&筋トレをバランスよく行う

浦上克哉 とっとり方式

中年期には、肥満が認知症のリスクになると述べましたが、高齢期になると、むしろ「痩せすぎ」のほうが良くないことがわかっています。

高齢期になっても中年期同様のメタボ対策を「健康のため」と続けると、かえって逆効果になる可能性があるのです。

なぜなら、有酸素運動は筋肉をつけるためではなく、脂肪を燃焼することが目的だから。脂肪がさほどないにもかかわらず有酸素運動を重ねると、今度は筋肉の中のアミノ酸が体内のエネルギーとして分解され始め、筋肉の衰えが加速します。

特に高齢期は、そうでなくても筋肉量が落ちていきやすい時期。有酸素運動のやりすぎは逆効果にもなり得るのです。

年齢によって、予防の方法は変わります。自身の認知症対策も進めつつ、高齢の両親向けの対策もまた、たまに会う際などに話してみてはいかがでしょう。

なお、「脂肪がないのに有酸素運動をすると筋肉が分解される」ということ自体は若い人でも同じですので、これも覚えておいて損はないと思います。

では、具体的にはどの程度運動すべきなのでしょうか。私たちのチームが開発した「とっとり方式認知症予防プログラム」では、まず5分ほどの準備運動で身体をほぐし、有酸素運動と筋力トレーニングを20分程度、バランス良く行なうことを推奨しています。

筋力トレーニングと言うと、いわゆる「筋肉ムキムキ」になるためのものだと誤解している人もいますが、ここでいう筋トレとは「筋肉を落とさないため」のトレーニングのことを指します。高齢者はもちろん、もう若くはないな、と思う方には非常に重要なトレーニングです。

そして、最後の5分ストレッチ。これにより、身体の柔軟性を維持し、転倒や骨折の予防につなげます。これを週に3回もこなせば、50代、60代の認知症予防としては理想的です。

 

頭と身体の疲労度は同じくらいに

運動と共に大事なのが、知的活動です。といっても、認知症予防という観点では頭だけ働かせるのでは不十分で、頭を使いながら、同時に指先を動かすことが重要になってきます。例えば、頭を使って文字を書くクロスワードパズルや数独、囲碁や将棋、麻雀なども認知症予防に有効です。

ただ、こうした取り組みで最も大切なことは、本人が楽しく取り組めること。「認知症予防にいいからやりなさい」などと家族が無理やり押しつけても、効果は期待できません。

また、先ほど紹介したリスク因子の中にはありませんでしたが、私は近い将来、そこに「睡眠不足」という因子が必ず入ってくると考えています。脳内のアミロイドβ蛋白が、睡眠によって毎晩除去されることが判明しているからです。

短時間睡眠や、質の悪い睡眠では、寝ている間にアミロイドの分解が十分にできません。それが長年続けば、認知症の発症につながることは明らかなように思えます。

なお、必要な睡眠時間の目安は6~7時間ほど。また、質の良い睡眠にするためには、身体と頭がバランス良く疲れているほうが良いようです。

運動をほとんどしないのに、デスクワークばかりで頭は疲れ果てている、といった状況は極力避けましょう。こうなると寝つきが悪くなり、睡眠の質も低下します。良質な睡眠のためにも、適度な運動が大切なのです。

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