2026年04月06日 公開

プレイングマネジャーの業務が積み重なり、限界を感じてしまうのは、決して個人の能力不足だけが原因ではありません。「もっと頑張る」「根性で乗り切る」といった精神論に頼るのではなく、仕事の構造そのものを見直していく必要があります。
連載「やることが多すぎる管理職の"ラクになる思考法"」では、経営者やリーダー育成に携わる中尾隆一郎さんがマンガと文章を通して、プレイングマネジャーが成果をあげるために"部下が自律自転できる仕組みづくり"を解説していきます。
今回は、やることが増え続けて潰れそうなプレイングマネジャーを救う「ジョハリの窓」の考え方を解説します。
(マンガ:オケ)
【今回の登場人物】
荒巻課長(42):優柔不断で頼まれると断れない。今の状況を抜けだそうと奮闘している。愚痴っぽい。
大崎さん(26):デジタルツールを駆使して効率化が得意。指示されたことだけやる。
田畑さん(57):慎重かつ丁寧に仕事をするタイプ。役職定年済。





いま、多くの企業で「プレイングマネジャー」が急増しています。プレイヤーとして数字を出しながら、同時にメンバー育成やチーム運営も担う「1人2役」の状態です。
20〜30代で初めて管理職を任される人の中には、「頑張っているのに空回りする」「仕事が整理しきれない」と悩む人も少なくありません。
実際、プレイングマネジャーが苦しくなる背景には、多くの圧力が同時にのしかかる構造があります。
例えば、
①プレイング業務の増加、②時間の制約、③新業務の追加、④上司の曖昧な指示、⑤メンバー対応の難化、⑥マネジメント経験の不足。
どれか1つでも大変なのに、これらが積み重なって、プレイングマネジャーは押しつぶされそうになってしまうのです。
これを「もっと頑張る」「根性で乗り切る」だけで解決するのは現実的ではありません。むしろ大事なのは、自分の状況を正しく「見る」ための有効なフレームを持つことです。
そこで役立つのが、心理学のモデルである「ジョハリの窓」です。

ジョハリの窓
ジョハリの窓は、1955年にアメリカの心理学者ジョセフ(Jo)とハリー(Hari)が提唱した、自分と他者の認識のズレを可視化するためのモデルです。
人は、
自分が気づいていること、他人が気づいていること、どちらも気づいていないこと、
この3つが混ざった状態で生活をしています。
ジョハリの窓は、それを4つの領域に分けて整理することで、コミュニケーションや自己理解を改善するツールです。
(A)開放の窓:自分も他者も知っている領域
例:「業務量が多い」「時間が足りない」など、皆が認識している部分。
ここが広がると、助けてもらいやすくなり、改善が早まります。
(B)盲点の窓:自分は知らないが他者は知っている領域
例:周囲は「もっと任せたほうがいい」と気づいているのに、本人は「自分がやるしかない」と背負い込むケース。
盲点の窓は、フィードバックをもらわない限り永遠に見えません。
(C)秘密の窓:自分は知っているが他者は知らない領域
例:「実はマネジメント経験がなくて不安」「本当は助けてほしい」。
秘密を抱えたまま頑張るほど、孤独が深まり、負荷が増大します。
(D)未知の窓:自分も他者も気づいていない領域
例:本人も周囲も気づかない強み・弱み、業務プロセスの抜け漏れなど。
これは、自分ひとりでは絶対に発見できません。
他社事例、専門家、同じ悩みを持つ人との対話を通じて初めて見えてきます。
プレイングマネジャーの多くは、「盲点の窓」と「秘密の窓」が大きく、開放の窓が小さい状態にあります。
・周囲は見えているのに、自分だけ気づけないこと(盲点)
・本当は助けてほしいのに、言い出せないこと(秘密)
この2つが大きいほど、上述した6つの圧力がさらに重く感じられ、「努力しても改善しない」状態へと追い込まれます。
逆に言えば、
①盲点の窓を小さくする(=フィードバックをもらう)
②秘密の窓を減らす(=少しだけ自己開示する)
これだけで開放の窓が広がり、抱えていた問題の多くが"見える化"されます。

私が100名以上の管理職と議論する中で、「1人では絶対気づけなかったこと」が次々と見えてきました。
複数人のジョハリの窓を重ねると、未知の窓が一気に小さくなる――これは大きな発見でした。
プレイングマネジャーのつらさは能力や経験不足だけが原因ではなく、「多くの圧力を1人で抱え込まざるを得ない構造」にあります。
だから最初にやるべきは、「もっと頑張る」ではなく、「自分の窓を開くこと」です。
信頼できる周囲の仲間と話してみるだけで、盲点が減り、秘密も軽くなり、問題の正体がはっきりします。原因がわかることで、あなたが背負っていた圧力は、軽くなり始めるはずです。
もし最近「しんどいな」と感じているなら、まずはジョハリの窓を使って、自分の状況を整理してみてください。
あなた自身とチームの未来が、そこから軽く動き始めます。
更新:07月14日 00:05