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なぜプレイングマネジャーは“抱えすぎ”てしまうのか? 能力のせいではない「構造的理由」

2026年03月30日 公開

中尾隆一郎(株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長)

中尾隆一郎

いま、多くの企業で管理職の役割は大きく変わりました。リクルートワークス研究所の調査では、管理職の実に約9割がプレイヤー業務を兼任しており、その時間は平均して全業務の約4割に達しています。
つまり、ほとんどの管理職が「プレイヤー」と「マネジャー」という二重の責任を同時に担い、結果を出し続けなければならない働き方に追い込まれているのです。

しかし、この状況は決して個人の能力不足や努力不足が原因ではありません。本質的な理由は、プレイングマネジャーが構造的に「持続不可能な働き方」を強いられていることにあります。

連載「やることが多すぎる管理職の"ラクになる思考法"」では、経営者やリーダー育成に携わる中尾隆一郎さんがマンガと文章を通して、プレイングマネジャーが成果をあげるために"部下が自律自転できる仕組みづくり"を解説していきます。

今回は、プレイングマネジャーが常に"背負いすぎ"の状態に陥る原因を紐解きます。

(マンガ:オケ)

 

プレイヤーの仕事に常に追われてしまう

【今回の登場人物】
荒巻課長(42):優柔不断で頼まれると断れない。今の状況を抜けだそうと奮闘している。愚痴っぽい。
目黒部長(57):荒巻の上司。圧が強め。感覚重視で突っ走るタイプ。

中尾隆一郎

中尾隆一郎

中尾隆一郎

中尾隆一郎

中尾隆一郎

 

本来は「7〜8割をマネジメントへ」、しかし現実はその逆

チームで安定的に成果を上げるには、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏が提唱する「成功循環モデル」を回す必要があります。これは、

関係の質(心理的安全性)が整う
→ 思考の質が高まる
→ 行動の質が磨かれる
→ 結果の質が向上する

という流れが連鎖する「組織が成長するメカニズム」です。

このモデルを機能させるには、マネジャーが業務時間の7〜8割を「マネジメント」に投じることが必要だとされています。

ところが現実は、プレイング業務だけで4割以上を使わざるを得ず、マネジメントに割ける時間が確保できていないのです。

これでは成功循環モデルを回すどころか、メンバーとの関係構築すらままなりません。

なぜこれほど理想から乖離してしまうのか。
その理由を形づくっているのが、プレイングマネジャーを四方から締め付ける「6つの圧力」です。

 

プレイングマネジャーが過負荷に陥りやすい6つの圧力

これらの圧力は、外側からの強制と、現場に内在する課題が複合的に絡み合うことで、個人の努力では制御不能なほどの負荷を生み出しています。

【外的要因の3つ】

1. プレイング業務の増加
採用難や異動による欠員が埋まらず、管理職自身がプレイヤーに戻らざるを得ない。
さらに、プレイヤーとして結果を出した経験が"居心地の良さ"となり、そこから抜け出しにくくなる。

2. タイムマネジメントの厳格化
残業規制が進み、かつてのように"時間で補う"ことが不可能に。
限られた時間の中で高い成果を求められる。

3. 新業務の急増
DX、セキュリティ、個人情報、コンプライアンス、SDGs、メンタルケア...。
10年前にはほとんど存在しなかった専門性の高い業務が追加されている。

【人間関係・スキル要因の3つ】

4. 上司の曖昧な要望
上司自身が答えを持たない時代。
曖昧なミッションや高すぎる目標が降りてきて、板挟みに。

5. メンバー対応の高度化
強い要望を出せばパワハラ扱い、控えれば"ゆるい職場"。
若手の期待も多様化し、コミュニケーションの難易度は急上昇している。

6. 本人のマネジメントスキル不足
多くの管理職は「個人成果を出したから昇進した」だけで、
チームで成果を出すためのマネジメントスキルを学ぶ機会が与えられていない。

この6つが同時多発的にプレイングマネジャーに降りかかるため、マネジメント時間は削られ、成功循環モデルが回らず、結果としてプレイヤー依存がさらに高まる——という悪循環に陥ります。

 

「三重苦」がプレイング業務を手放せなくする

マネジメントに時間を割きたい。しかし、プレイヤー業務を続けざるを得ない理由の上位3つは、

・業務量が多い
・部下の力量不足
・自分が加わらないと目標達成できない

この三つ巴の状態が、プレイング業務から抜けられない構造的な足かせとなっています。

 

努力しても改善しないのは「現状把握」ができていないから

プレイングマネジャーは決して努力していないわけではありません。書籍や動画で学び、上司や同僚に相談し、研修にも参加している。アンケートをするとこのような回答が返ってきます。それでも半数以上が「困っている」状態から脱却できていないのが現実です。

その原因は、「自分の本当の課題を正確に把握できていない」こと。

実際、多くの管理職が「自分は何に困っているのか」「ボトルネックはどこか」を正しく認識できていません。

そのため、努力が空回りし、状況が変わらないまま疲弊してしまいます。

 

プレイングマネジャーが苦しいのは、個人だけでは解決不能の構造だから

プレイングマネジャーが過負荷に陥るのは、能力の問題でも根性の問題でもありません。

・外的・内的の6つの圧力が同時にかかり
・プレイヤーを手放せない三重苦が存在し
・成功循環モデルを回す時間がなく
・現状を正しく把握することさえ難しい

これらが重なった結果、個人の努力ではコントロールできない持続不可能な状態に置かれている。

だからこそ必要なのは、「もっと頑張れ」ではなく、組織全体で、現状把握をして、やることを"やめる・絞る・見直す"を進め、マネジメントに時間を取り戻す支援をすること。

プレイングマネジャーを救う道は、そこから始まります。

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