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成果を上げるプレイングマネジャーの習慣 できない人が越えられない5つの壁

2026年03月23日 公開

中尾隆一郎(株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長)

知っている→いつでもできるの大きな壁

人手不足と組織のスリム化が進む中、現場の実務とマネジメントを同時に担う"プレイングマネジャー"が急増しています。とくに40代前後の管理職は、成果を出しながら部下を育てる二重負荷に悩み、思うように成果が出せず焦りを抱えることも多いかもしれません。

連載「やることが多すぎる管理職の"ラクになる思考法"」では、経営者やリーダー育成に携わる中尾隆一郎さんがマンガと文章を通して、プレイングマネジャーが成果をあげるために"部下が自律自転できる仕組みづくり"を解説していきます。

今回の物語は、プレイングマネジャーの桐谷さんが成果を上げ、同じくプレイングマネジャーの荒巻さんがその姿に複雑な思いを抱くシーンから始まります。

(マンガ:オケ)

 

「知っている」と「いつでもできる」の大きな壁

【今回の登場人物】
荒巻課長(42):優柔不断で頼まれると断れない。今の状況を抜けだそうと奮闘している。愚痴っぽい。
桐谷課長(38):好奇心旺盛でフットワークが軽い。小学生の息子がいる。いつも小走りで移動。

知っている→いつでもできるの大きな壁

知っている→いつでもできるの大きな壁

知っている→いつでもできるの大きな壁

知っている→いつでもできるの大きな壁

知っている→いつでもできるの大きな壁

 

ステップアップに必要な「5つの壁」

「1:知らない」~「5:いつでもできる」までのステップ

桐谷さんが成果を出したのを見て、「自分もできる」と言っている荒巻さんのような人、あなたの回りにいませんか? 彼らは、「人がやったこと」は簡単に見えるという錯覚に陥っています。「人がやったこと」って簡単に見えるのですが、「知っている」から「いつでもできる」に到達するには、図①のような5つのステップがあるのです。

桐谷さんと荒巻さんをこのステップ上のどこにいるのか確認してみましょう。

桐谷さんは、新規商品に絞って販促施策を行って目標達成をしました。つまり、「4:できた」のステップにいます。一方の荒巻さんは、「2:知っている」のステップにいます。

しかし、荒巻さんの「1:知らない」から「2:知っている」へのステップアップは、桐谷さんが実行してくれたおかげで得られたもの、つまり後知恵の可能性が高いです。だとすると、荒巻さんは、桐谷さんに感謝こそすれ、文句を言う筋合いはないはずです。

 

なぜ、マイクロソフトはスマホ事業で成功できなかったのか

私たちは、荒巻さんのように「2:知っている」という段階で満足してしまいがちです。しかし、これが行動や成果に直結するかといえば、答えはノーです。なぜなら、「2:知っている」と「3:したことがある」、さらには「4:できた」の間には、とてつもなく大きな壁が存在するからです。

ただ情報として知っているだけでは、それがもたらす本当の価値や、実現の困難さを理解することはできません。例えば、iPhoneの登場時を振り返ってみましょう。世界を変えたこのプロダクトでさえ、「知っている」人々から正確に評価されませんでした。

iPhoneが初めて披露された2007年、当時のマイクロソフトCEOであったスティーブ・バルマー氏は、「iPhoneが大きなシェアを獲得する可能性はゼロに等しい。ノーチャンスだ」と断言しました。しかし、iPhoneは成功しました。

マイクロソフトは、iPhoneに遅れること3年、2010年にWindows Phoneという独自のスマートフォン事業を展開しました。しかし、2017年には開発を終了しました。

マイクロソフトは、iPhoneを「2:知っている。状態でした。そしてiPhoneと同様のスマートフォン事業をスタートしましたが、成功できませんでした。

つまり、これは、「2:知っている」が、「4:できた」とイコールではないことを示しています。

頭で理解していても、その後の行動や成果に結びつけるには、「知っている」と「できる」の間に横たわる、実行という名の大きな壁を越えなければならないのです。

一方、Googleは2007年にAndroid社を買収し、iPhoneの翌年の2008年にスマートフォンを発売しました。Googleは、この壁を理解していて、実行するための技術力を手に入れることで、実現したわけです。

 

「できた」はゴールではない

では「4:できた」にいる桐谷さんは、これで十分なのでしょうか?

現在の荒巻さんのいる「2:知っている」と桐谷さんのいる「4:できた」の間には、大きな「壁」があります。

実際にやってみると、大小さまざまな課題に直面し、それらを解決して初めて「4:できた」に到達できるのです。

しかし、「4:できた」は、本当のゴールではありません。

「4:できた」は、言わば「成功の第一ステップ」の段階です。1度か2度、特定の条件の下で成功を収めた状態です。

これに対し、真に目指すべきステップは「5:いつでもできる」です。

これは、再現可能、いつでもできる「確信」がある状態です。いかなる環境、状況下でも、「こうすれば、目的を達成できる」と言い切れるレベルです。

この違いをプロ野球の「二刀流」に当てはめて、イメージしてみましょう。

2:知っている:プロ野球で二刀流が何かを知っていて、うんちくを語れる。
3:したことがある:高校野球の名門校で四番とエースを兼任し、結果も出した選手。
4:できた:メジャーリーグに二刀流としてドラフトにかかり、スポットで結果を出した選手。
5:いつでもできる:大谷翔平選手(メジャーリーグで常時、かつ持続的に、圧倒的な結果を出し続けられる)

「2:知っている」「3:したことがある」は数百人から数千人レベルでしょうか。「4:できた」は数十人。「5:いつでもできる」は、1人レベルです。

少し極端な例でしたが、「4:できた」と「5:いつでもできる」の間には、これほど途方もない、別次元の隔たりがあるのです。

 

「知っている」に留まる人、「したことがある」に移行できる人

これからの荒巻さんは、「知っている」で留まらない

荒巻さんに話を戻しましょう。荒巻さんは、桐谷さんの成果を見て、「自分でもできる」と感じました。世の中には、成功事例を目の前にしても、「そんなのうまくいくわけがない」と頭ごなしに否定し、実行の壁の前に立ち尽くして「2:知っている」の段階に留まる人たちがいます。

しかし、荒巻さんは違います。桐谷さんのやったことを正確に理解し、自らも「3:したことがある」へ移行しようとしている姿勢は、「かなりイケています」。

現代の大半のマネジャーは、プレイヤーの役割とマネジメントの役割の二刀流を求められています。

しかも、プレイヤーの役割が大きくなり、マネジメントに掛けられる時間が少なくなっています。効率的にマネジメントを学んで、実践できるようになる必要があります。

これからの企画では、みなさんと一緒に、「2:知っている」だけではなく「4:できた」に通じるマネジメントスキルを身につけてもらいたいと思います。

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