2022年11月15日 公開
そして、1年後に満を持して初めての商品「BASE PASTA」が完成しました。1袋1食分で、1日に必要な栄養素の3分の1が含まれている、完全栄養の主食です。
最初はアマゾンに出品してみました。販売にあたってのちょっとした仕掛けとして、近所にお店を構えていた手作りパスタで有名なシェフの方に協力してもらい、「完全栄養パスタ試食会」を開いたのです。
メディアを集めて記者会見を行なうと、話題性もあり、予想以上の注目を集めました。アマゾンの食品部門では、ミネラルウォーターを抜いて堂々の1位になったこともあります。
もっともそんな状態が続くわけはありません。物珍しさから来る小さなブームが終われば売上が落ちる、それ自体は想定内でした。とはいえ、おいしくて栄養バランスのいい商品を次々と開発していくことはやはり大変なことです。
途中で何度も壁にぶつかりましたが、苦労があるのはビジネスも人生も同じこと。壁にぶつかっても、何とか粘ってみる。そのときには解決できなくても、粘っているうちに、どこかで道が拓けてくるものです。
励みになったのは、起業した先輩から言われた言葉でした。「経営者が楽になるのは簡単だぞ。売上を落とせば仕事も減るし責任も軽くなる。うまくいっているときこそ大変なんだ。大変なのは幸せなことなんだよ」
不安や苦労があるのは誰でも当たり前。でもそれはうまくいっているからだと思い、自分を鼓舞してきました。
会社の仲間はみんな、20年後、30年後もお互いに仕事をしていきたい人ばかり。明確なモチベーションがあることが採用の第一条件で、みんなやる気満々です。中には「食べて健康になるラーメンをつくる!」という熱意が原動力の社員もいます。
ですが、徹夜や残業が当たり前では、そのような良い未来は望めません。今の時代、働き方も「サステナブル」であるべき、というのが当社の考えです。大きな目標を達成するために無理を伴う働き方をする、という選択はしていません。
目指すのは、「主食をイノベーションし、健康をあたりまえのものにする」という遥かな理想です。でも、そのために大切な何かを犠牲にしたいとは思いません。
思えば大学受験の頃からそうでした。目標を達成するためには無理をする必要がある、なんて固定観念にすぎません。事業を続けていくのはもちろん大変なこと。でも「大変さ」と「無理をしないこと」は両立すると思います。
そもそも、私たちが生きるのは、60歳、70歳になっても働き続ける世の中です。であれば、健康寿命を伸ばし、持続可能な働き方を整えることが、日本を破滅的な未来から救う道ではないでしょうか。
これからもサステナブルな働き方で、「栄養のインフラ」構築を推し進めていきたい。そんな思いが、私を突き動かしています。
【橋本舜(はしもと・しゅん)】べースフード株式会社代表取締役。1988年生まれ、大阪府出身。東京大学教養学部卒業後、(株)DeNAに新卒入社。駐車場シェアリングや自動運転移動サービス等の立ち上げに従事。新規事業を担当し、社会課題と向き合う中で、健康維持・病気予防の個人および社会における重要性を強く認識する。 2016年に「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションとするベースフード㈱を設立し 、完全栄養の主食「BASE PASTA(R)」を開発。その後、「BASE BREAD(R)」や「BASE Cookies(R)」の販売も開始し、さらなる新商品の開発、国内での普及及び海外展開に尽力している。
(『THE21』2022年4月号掲載「私の原動力」より)
更新:12月04日 00:05