――普通の会社員だと、信用はともかく、個性を確立するのはなかなか難しい気がします。何か良い方法はありませんか。
【佐久間】それには自分が企画やアイデアを出さなくてもいい場面でも、企画やアイデアを提案していくことです。
僕が入社した頃のテレビ東京って、お笑い番組はほとんどなかったんです。だから、企画も当然求められてもいなかった。でも僕は、他の番組をやりながら、お笑い番組の企画をどんどん出していました。それがやがて『ゴッドタン』などにつながっていったんです。
そうやって、会社の中で誰もやっていない「社内初」を狙っていくことも、個性を確立する1つの方法かもしれませんね。
――なるほど。ただ「社内初」を狙っていく場合、「時代の先を読む企画力」が必要になってくると思います。
【佐久間】一番簡単なのは、同業他社の動向、特に自身が勤務する会社と同規模の企業がやっていることを定期的にウオッチすることです。テレビ局であれば、自局がまだやっておらず、他局が先駆けて行なっている企画をやれば、社内初になります。ただ、これは自分以外の人も考えている可能性が高い。
そこで、自分たちより進んでいる別業界の動きを参考にします。例えばテレビ業界の場合は音楽業界です。音楽業界で起きたことは、すべてではありませんが、数年後に映像業界でも起きることが多いからです。映像よりも音楽のほうがデータ容量が軽いこともあって、音楽業界のほうが革新が早いんですね。
『あちこちオードリー』という番組でオンラインライブをやりましたが、これも、コンテンツ配信よりもライブが主流となっている、近年の音楽業界の動きを参考に企画したものでした。
どんな業界の方でも、他社や他業界の動きをヒントにすれば、「社内初」の企画は思い浮かぶはずです。
――ところで、本誌の読者の中には、部下のマネジメントに苦労しているチームリーダーが少なくありません。番組づくりはまさにチームマネジメント。部下を成長させる秘訣があれば、ぜひ教えてください。
【佐久間】これも自著で触れたことですが、部下の仕事は「引き取らない」と決めていました。何か不完全なものを部下が提出してきたとき、「あとはやっておくよ」と言って上司が引き取ってしまうことって、ありますよね。
そういう上司は、部下からすると一見いい上司です。でも、こういう上司のもとでは、部下は無意識に手を抜いて、力が伸びないのです。これは僕自身がそういう上司の下で仕事をして気づいたことです。
結果的に部下思いなのは、「手間暇かけたスパルタ」をやってくれる上司。だから、必ずフィードバックし、部下に修正させるようにしていました。
もちろん、単にダメ出しをするだけでは成長しませんから、なぜダメで、どうすれば良くなるかのアドバイスも伝え、そこから先は本人に考えさせるようにしていました。
――ご著書には、「『褒める』は最強のビジネススキル」という一節もありました。
【佐久間】褒めるのって、その人の武器を見つけてあげることにもなると思うんです。だから、部下がした仕事の中で、チームにプラスをもたらしてくれたことは、心のメモに書き出しておく。そして打ち上げの席などで、その貢献を具体的に褒めるようにしていました。
これは部下だけでなく、一緒に仕事をする人には共通して行なっていることです。先日も乃木坂46の齋藤飛鳥さんをべた褒めしました。後輩二人とフリートークをしてもらったのですが、自分が前に出すぎると自分の映像ばかり使われてしまうとわかっていたのでしょう。後輩二人に花を持たせる見事なトークだったので、その点を彼女が嫌がるほど褒めました(笑)。
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更新:11月23日 00:05