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「価値観やトレンドを企業が押し付ける時代は終わった」グラニフCEO 村田昭彦

2021年11月07日 公開

【経営トップに聞く 第55回】村田昭彦(グラニフCEO)

グラニフ

成果が出ないのは、現場ではなく、経営の責任

――CEO就任から1年強が経ちました。目標達成への道のりは順調でしょうか?

【村田】就任した時点で、グラニフについてのインプットが少なかったので、1年間は過去の歴史や現状を把握するために、かなりの時間を使いました。そのため、1年目については、当初思っていたよりはスピードが遅くなっていますが、お客様を実際に見て初めて理解できたことも多くあります。

 店舗の面積を従来の2倍にすればいいと思っていたところが、やはり3倍は必要だと考え直すというような、多少の変更はあるものの、当初の仮説自体は大きく変わっていません。様々な施策を、一部の店舗などで実施して検証し、全体に広げていくということを、どんどん進めていきます。

――海外展開についてはいかがでしょうか?

【村田】グラフィックは世界に通用しますし、先ほど申し上げたように、インバウンドが売上の10%を占めていましたから、当然、考えています。国内で足場を固めたら、海外展開にも力を入れるつもりです。

 実際、台湾などのアジアやドバイなどに出店したこともありますし、現在もオーストラリアに2店舗あります。日本のアパレル企業で海外進出に成功しているところは少なく、私もアパレル業界で働いてきて、そのことを知っているので、グラニフの海外店舗の売上を見たときは、高くて驚きましたね。

――最後に、村田CEOご自身についてお聞きします。もともと経営者になりたかったのですか?

【村田】経営の意思決定をできる立場になりたいとは思っていました。

 20代の頃、皆が一生賢明に仕事をしているにもかかわらず、会社の業績がなかなか上がらないという経験をしました。一方、同じように仕事をしているにもかかわらず、急成長している企業もありました。

 その企業のほうが優秀な人が集まっているのかと考えましたが、そうではなく、過去に積み重ねた選択の結果が今の状況であり、それは経営力の差であるとわかりました。経営上の大きな意思決定で誤った選択がなされたら、いくら多くの人が現場で頑張っても無駄なんだな、と。

 だから、早くから経営の意思決定に関わりたいと思い、ベンチャー企業に転職しました。

――正しい意思決定ができるようになるには、どうすればいいのでしょうか?

【村田】正しい意思決定ができているかは将来の結果でしかわかりませんが、過去にどれだけ重要な意思決定をしてきたかという数が重要だと思います。

 今までいくつかの企業で仕事をしてきましたが、いざ意思決定が必要な場面が来ると、判断できない人がいます。それは、トップをはじめとする上位者の意思決定に従うだけだったからです。何か判断できるとしても、誰も反対しないような案件や過去の成功体験を踏襲する案件だけ。それでは、不連続な変化時代に対応できないと思います。

 ですので、正解のない中でも自分で考えて答えを見つけること。もし間違った答えならば、多くの人に迷惑をかけるという責任が生じるから、一生懸命に考えるのだと思います。

 とはいえ、もし失敗したとしても、命を取られることはありません。だから、どんどん自分で考えて意思決定をすればいい。経営陣や役職者でなくても、自分の担当領域なら自分で考えて判断すべき機会はたくさんあるので、失敗を恐れずにチャレンジすることこそが成長への近道だと思います。

 

《人物写真撮影:まるやゆういち》

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