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人口減少に立ち向かう? 日本政府が推進する「SDGsとまちづくり」

2021年10月26日 公開
2023年02月21日 更新

新谷聡美(株式会社ブレインファーム社長)

 

SDGs×まちづくりの主役は、誰なのか

では、どうすればSDGsをまちづくりに導入できるのでしょうか?

地方創生SDGsを推進するために、SDGsのアイコンをポスターに入れて掲示したり、新しいSDGs標語を公募して表彰する、という地方自治体は珍しくありません。

その一方で、SDGsを流行りのキーワードととらえ、新商品のキャッチコピーにSDGsを取り入れたり、会社サイトにアイコンを掲載する民間企業も少なくないと思います。

いずれも真面目に取り組んでいることが多く、その意味で意義のある活動です。ただ、そもそもSDGsは2030年に向けた達成目標の総称。何百回アイコンを掲げても現実の環境保護も格差の是正も進まないですしそもそも、2030年、つまりあと10年足らずで次の言葉に変わるかもしれないので、10年後のゴミを大量生産していることと同じなのかもしれません。

本来のSDGsのまちづくり、とは、持続可能なまちづくりのことのはず。

行き過ぎた環境破壊による異常気象に悩まされることなく、学校に行くのにも、農林水産業の収穫にも、企業活動を行うのにも支障がない暮らし。

子どもから高齢者まで、障がいの有無といった個性に関わりなく、誰もが安全・安心で、活き活きとした毎日が送れる暮らし。

性別や国籍に関わらず、平等で公正な環境で働くことができるため、国内外から多くの人が集まり、人口減少時代でも労働者不足に悩むことがない暮らし。

そういう暮らしを当たり前に継続していくまちづくりが、SDGsのまちづくりです。

そして、そういう暮らしを担っている、個人、団体、民間事業者、地方自治体、国自身も、SDGsを推進する主体者なのです。

つまり、SDGsの理念に基づくまちづくりを推進するためには、内閣府版のように、地方自治体が主導するだけではなく、環境省版のように、民間企業が自らの経済活動に目を向けるだけではなく、それぞれがパートナーとして協力・連携しあい、新しい価値を産み出していく、官民連携の発想が不可欠です。

官民連携は別名PPPと言います。これは、Public‐Private‐Partnership(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の略称です。公共(パブリック)と民間事業者(プライベート)がパートナーシップを組み、それぞれが、将来の自分たちの暮らしをどうしたいのかを真剣に考え、本当に成果の創出につながる活動を着実に実行し成果をあげていく、それがSDGsとPPPのあるべき姿なのです。

 

社会的な成果創出とこれからの官民連携とは

最近、主としてヘルスケア分野で、SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)という新しいスタイルのPPPが普及し始めています。それを推進するために、内閣府では、成果連動型事業推進室という組織もできています。

ソーシャル・インパクトとは、社会的な価値創出のこと。今だけではなく、将来的な社会的価値を産み出すために、専門性の高い取組を行い、その結果を、産み出すことができた価値で評価することで、より良い未来を創り出そう、という新しい考え方です。

例えば、将来の医療費抑制という効果を産み出すために、がん検診告知を、より多くの人が受診したくなるように工夫したりタバコを本当にやめられるような、新しい禁煙対策を取り入れたり…。身近なところでも、そうした取り組みが始まっています。

こうした考え方をまちづくりに導入すると、例えば、歩きたくなる街路や効果的な介護予防の取組で、要介護者が増えにくいまちや多面的な子どもの貧困対策で進学率が相対的に高まり、将来の納税者を確保できるまち、全員で協力し廃棄物がグンと減ったため、ゴミ処理コストが少ない分、他より税金が低いまち、そんなまちづくりも実現できるかもしれません。

いずれにせよポイントは、SDGs推進に向けた本当の成果創出。17アイコンを掲げて満足するのではなく、官民が協力して知恵を出し合うことでSDGsの理念に基づくまちづくりは実現できます。

最近の異常気象をみてもわかるように、SDGsへの取組は待ったなし、の状況です。SIBをはじめPPPの多くは海外発祥の制度ですが、この分野で日本の意識が遅れている、と言われることのないよう、効果的に取り組んでいきたいものです。 

 

【PROFILE】
新谷聡美(シンタニサトミ)株式会社ブレインファーム代表取締役

大阪大学法学部卒業。中小企業診断士として最年少・女性初の大阪市特別診断員に選任された後、コンサルティング・ファーム等を経て、現職。地方自治法改正による指定管理者制度の創設とともに、パブリックビジネス領域のコンサルティングに取り組む。行政コンサルタントとして、全国の地方自治体や民間企業を対象にPPP分野のコンサルティング・アドバイザリー業務に従事するほか、学生時代の途上国支援の経験と専門知識を活かし、PPP×SDGs推進にも取り組んでいる。全国の地方自治体の56%が活用しているPPPポータルサイトBestPPP!(ベスピィ)を運営。2016年に第2回荒川区ビジネスプランコンテストで荒川アントレプレナー大賞、荒川ウーマンアントレプレナー大賞をダブル受賞。2018年度より、国土交通省PPP協定パートナー企業に認定。日本PFI・PPP協会の正会員。

 

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