2021年05月17日 公開
2023年02月21日 更新
働き方改革に加え、コロナ禍によって、ますます副業が一般化しつつある。副業をする人は、今度、さらに増えるのか? また、副業をする人が増えると、日本経済にどのような影響があるのか? 経済アナリストで、東京理科大学大学院で教鞭も執るロバート・フェルドマン氏と、日本最大級の副業マッチングサービス「シューマツワーカー」の運営会社のCEO・松村幸弥氏が、東京理科大学インベストメント・マネジメント〔株〕が運営する産学連携インキュベーションオフィス「BRIDGE TO SUCCESS THE CROSSPOINT 富士見」で対談した。
【フェルドマン】副業が一般化すると、ムダになっている労働資源が活用されて、日本の生産性向上につながると思います。
出社しても仕事をせずにムダになっている時間を副業に使えるというのも1つですが、この効果は小さいでしょう。
MITメディアラボのアレックス・ペントランド教授が書いた『ソーシャル物理学 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(邦訳は草思社)によると、良いチームには新鮮な外部からの情報を持ってくる人がいます。副業をすると、必然的に、本業のチームにも副業のチームにも「知」の媒介が起こります。この影響が極めて大きいと思います。
また、これまで副業が一般化しなかった要因は、1つは労働法ですが、もう1つは、「いつ何をしてほしいか」という情報を伝える壁が高かったことや、仕事をするために移動をするコストが高かったことがあります。この壁が、ITの発達のおかげで低くなりました。経済学用語を使えば「取引コスト」が低くなったのですから、副業はさらに広がるでしょう。
その中で、副業マッチングサービスのような「仲人役」は、ますます日本経済に貢献できるのではないかと思います。
【松村】当社でご紹介させていただいているのはエンジニアやウェブマーケター、デザイナーなどのIT人材がほとんどですが、他の業種にも、さらに副業を浸透させていくためのヒントはあるでしょうか?
【フェルドマン】IT人材としてイメージされにくいですが、新しいソフトウェアやシステムの使い方を教える人も必要ですね。
私はかねてから申し上げていますが、技術は開発も重要ですが、普及のほうがもっと重要です。
例えば、コンビニへの無人レジの導入が進んでいて、私も使えるようになりましたが、まだ無人レジを使わず、店員がいるレジに並ぶ人が多くいます。使い方がわからないからでしょう。
これからは、トレーニングをするIT人材も増えていくのではないでしょうか。
【松村】ZoomやSlack、Chatworkといった、業務管理ツールやクラウドツールなどの使い方を中小企業に教える副業が増えれば、中小企業のDXが進みますね。
IT人材は東京に集中していて、自治体がUターンしてほしいと思っていても、東京から地方に引っ越したいという人はあまりいません。ただ、副業だったら地方の中小企業で働きたいという人は多い。副業が広がることは、地方の中小企業のDXにもつながります。
米国のギャラップ社が行なっている組織エンゲージメントサーベイでは、日本企業で働く人のエンゲージメントは世界最下位レベル(139カ国中132位/2017年発表)だとも言われている状況ですが、その背景には終身雇用・年功序列をはじめとする、労働における自己決定権が限定されている点が大きいと思います。会社に依存してしまっている。個人事業主的に副業をすれば、働きがいを得ることにもなると思います。
【フェルドマン】「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がありますが、私はこの言葉が大嫌いです。ワークでもライフでも使命感を持って動くのが、充実した人生だからです。
1959年に発売されたバレット・ストロングの「Money (That's What I Want)」という曲があります。ビートルズもカバーしていて、人生で一番大切なのはお金だ、という歌詞です。それも1つの考え方ですが、それはおかしいと思う人も多いでしょう。
メリー・ケイ・アッシュという化粧品会社を作った人は、ピンクのキャデラックに乗っていた物欲の強い人だったのですが、社員の動機づけは称賛と承認で行なっていました。それで大企業を作り上げた。
私は、ストロングではなく、アッシュが正しいと思います。自分の人生は何のためにあるのか。それを仕事の中に取り入れるのが、充実した人生です。
【松村】副業をしたい人の中にも、お金が目的でない人も多くいます。本業で十分なお金をもらっているので、副業では好きなことをしたい、応援したい会社で仕事をしたい、地元の会社で働きたい、という方が多いんです。自己実現のために副業をする人もいます。
更新:11月24日 00:05