2021年03月08日 公開
2023年02月21日 更新
次のポイントは、「多くは教育産業となる」ことだ。このことに、あなたはどういうイメージを持つだろうか。たとえば酒屋さんがワイン教室を開き、ワインの価値を伝えるとともに、月謝をいただく。そういうビジネスのイメージだろうか。
もちろんそういうケースもある。しかしここで言いたいのは、もっと本質的で、もっとシンプルなことだ。たとえばワイン教室を開けるくらいの酒屋だとすれば、そもそもワインには詳しいし、それがどんな料理に合うかもわかるだろう。
さらに食べ物にも詳しければ、この時期は旬が何で、それを食べるならどのワインに合わせればいいかわかるだろう。それを教え・伝えることを主とするというのが、ここで言う「教育産業」の本質だ。
その結果、旬の食べ物に合わせて毎月決まってワインを買う顧客が増えれば、それは月謝をいただくのと同じだ。さらにその結果、毎月決まった額で旬の食材とワインをお届けするなら、さらに月謝っぽい。
今注目の「サブスクリプションモデル」も、その基本は「定額制・継続課金」ということだから、これはサブスクリプションモデルだとも言える。
東京都下のあるクリーニング店の事例を紹介したい。まずこの店では、店主は「クリーニングマスター」だ。お客さんが同店にクリーニングに出そうと衣服を持ってくると、「これは家で洗える」と、家で洗えるものはその洗い方まで丁寧に教えて、返す。
預かった衣服にシミなどがあると、時にそれを写真に撮り、クリーニングしたあとで、詳細な解説付きで返すこともある。さらに時には「家庭洗濯教室」も開く。
店主はそもそも、専門的な技術教育を受けたクリーニング職人だ。彼はその腕にかけて、「衣服をきれいにするとは」を教え・伝えているのだ。さらに、店頭には糀ドリンクや薬膳茶、さまざまな雑貨など、およそクリーニング店らしからぬものが多く並んでいる。
なぜかといえば、それは店主が教え・伝えたいことだからだ。店主自身、30歳の頃に潰瘍性大腸炎で闘病し、腸内状態の重要さ、発酵食品の大切さを痛感したことがある。その経験からお客さんに教え・伝えたいことがある。最近では中医学も学び、自分がこれと思ったものの品揃えもしている。
彼にとって「きれいにするもの」は、衣服だけではないのだ。そして信頼関係で結ばれた顧客は、店主の声に耳を傾け、自分の生活に取り入れる。この店で見られるような本質が「教育産業」なのである。
最後に、「社交サロンが隆盛する」。サロンとは、人と人が集う場所である。今後特に店舗は、モノを買うための場所ではなく、人々が社交し、交流する場になっていく。顧客は店と、あるいはその店に集う人と交流するために、店に足を運ぶようになる。
こうなると、店には商品すら置かなくてもよくなる。たとえば、自動車販売店などが「車を置かないショールーム」を作っているのも、その例だ。店舗はどんどん「コミュニティの場」に変わっていくだろう。
先述したクリーニング店には素敵な庭があり、カフェのようなイスとテーブルもしつらえられている。この店の顧客はそこに集い、交流する。そういうシーンは、私の会の会員企業のあちこちで見られる。
店主に聞いた話だが、以前クリーニング店経営者の知人が同店を見たとき、なぜこんな庭があるのか、ここは駐車場にしたほうがいいのではないか、なぜ看板ものぼりもないのか、「ワイシャツ○○円~」と表示されるような電光掲示板を出せばいい、などの声が上がったというが、それは店主の発想とは対極にある。ここは社交サロンなのである。
一方で、オンラインサロンのようなリモートでつながる場も、さらに活発化していくだろう。また、メーカーがオンライン上で顧客とつながろうとする動きも、ますます加速するはずだ。
そして人間はやはり、リアルな接触を求めるもの。ウィズコロナの時代においては、リアルとオンラインを併用しながら、「サロン」を作っていくことがますます重要になっていくだろう。
更新:12月04日 00:05