長引くコロナショックの影響により、「ハイパーインフレは不可避」と主張する藤巻健史氏。その対策としてインフレ耐性の強い資産への避難を勧めているが、インフレ耐性が強いとされる資産の代表が「不動産」だろう。ただ、藤巻氏は近著『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』において、「不動産への投資は、現時点ではかなりの注意を要する」と主張する。その理由とはいったい?
*本稿は、『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです(写真撮影:長谷川博一)。
私は本来、不動産はインフレへのヘッジ手段として有効だと考えています。
株もインフレには強いのですが、選ぶ銘柄を間違えると紙くずになってしまうというリスクがあります。
一方、不動産は株と同様にインフレが起こればそれに従って価格が上昇しますし、なんらかの理由で大きく下がっても、株のように価値がゼロになってしまうようなことはまずありません。不動産価格は後に日本が復活した時に再び上昇するでしょう。
「少子化で人口が減るから、長期的には、日本の不動産は下がる一方なのでは?」そんな質問を受けることがありますが、不動産価格を決める一番の要因は、日本がインフレになるかならないかであって、人口減少は相場の綾に過ぎません。タクシー初乗り10万円になるほどのハイパーインフレが起きたら、坪50万円の土地が坪1億円になるかもしれませんが、少子化ではそこまでのインパクトはなく、せいぜい坪1億円が坪7000万円になる程度の話です。
特に現在のような低金利の時代には、「長期の固定金利で借金をして不動産を買う」というのは、強力なインフレ対策になります。借金をして株を買うことはできませんが、借金をして土地を買うことはできるのです。
とはいえ、コロナショックによりここまで先行きが見えない時代になった以上、不動産を買うことを今はお勧めできません。今、不動産を買っていいのは、よほど手元の現金に余裕がある人だけです。5年間以上は寝っ転がっていても食べていけるような人に限ります。
なぜなら、今の不動産価格は決して底値ではないと思うからです。
コロナショック後、多くの企業が倒産する可能性がありますから、そうなれば不動産価格は今よりも下がることは確実です。さらにコロナの第二波、第三波が来たとしたら、不動産価格が大暴落する可能性も少なくありません。あまりにも危険過ぎます。買っていいのは、それでも耐えられる人のみです。
そもそも、銀行もこの状況の中ではお金を貸してくれませんから、手元に現金がある人でないと、買えないと思います。
もっと土地が下がるかもしれないという時に「逆張り」で買うのは極めて勇気がいることです。先行きによほど自信がないとできません。土地の値段が下がり続ける時、普通の人がそれに精神的に耐えられるか疑問です。どこまで下がるのかと夜も眠れなくなると思います。
私がディーラーとして成功できたのは、逆張りをしていたからですが、逆張りをするとしばらくは損が続くので、精神的に耐えるのが大変です。私は部下に「三度血ヘドを吐かなければ、プロのディーラーとして大成しない」と常に言っていましたが、逆張りのプレッシャーとはそれほど、すさまじいものです。私は耐えるのが仕事だったのでよいのですが、ディーラーでない一般の方々には少々酷だと思います。
一方、海外不動産への投資は悪くない選択だとは思いますが、これまた現在は不確定要素が高過ぎることもあり、今すぐという意味ではお勧めできません。
そもそも海外不動産への投資は言葉の問題などもあり、かなりの時間を取られることを覚悟しなくてはなりません。
実は私も海外不動産への投資を行っているのですが、ちょっとした手続きなどにかなりの時間を取られ、相当なストレスになっています。クレーム対応なども当然、英語です。メールならまだよいのですが、時には電話で苦手な英語で対応しなくてはなりません(外資系企業で長年働いてきたにもかかわらず、私は英語が苦手なのです)。
現地とのやり取りをすべてやってくれるような業者もありますが、その分、手数料がかかることは覚悟したほうがいいと思います。
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更新:11月22日 00:05