2020年07月10日 公開
2020年07月10日 更新
砂漠の宿のご主人。意外にグルメな人です、特に猫の餌。その缶詰は、うちの晩飯と同じです。
軽自動車で稚内から南アフリカまでドライブした、たいそう暇な夫婦ものです。
日本への帰り道、モロッコでロックダウンに巻き込まれました。
5ヶ月間も閉じ込められていますが、そもそも引きこもり系の体質なので外出禁止はさほど気になりません。
辛いのは、イスラム教の豚肉禁止です。ラード不足で脂汗がでます。
6月下旬、モロッコの1日の新感染者数が大爆発しました。
これまでの最高値281人をはるかに超える、539人。ほぼ倍。
前日は77人だったので、いきなり7倍ものオーバーシュートです!
5日後、その記録もあっさりと塗り替えて563人。
お国存亡の危機に戒厳令でも出るのではないか恐れていたら、政府はアンビーバブルな逆張り戦法に出ます。
『ハマム(公衆浴場)の再開。カフェ、レストランの通常営業』です。
加えて、都市間移動も許可されました。
オーバーシュートを喰らったばかりだというのに、どうして!?
とうとう、国民の命より経済を優先したのですか!?
王さまに直訴せねばならぬと絵葉書をしたためていたところ、まったくのお門違いだと気づきます。
実はモロッコの感染対策は、成功していたのです。
感染者の範囲を国土の5%の地域に封じ込めました。
そこで今回、感染者のいない地域だけをほぼ平常の生活に戻したのです。
許された都市間移動は、安全な地域だけ。といっても国土の95%もあります!
第2波が来てしまったか!と怯えた数値は、第2フェーズに入ったためです。
感染者がいる地域の会社を一つひとつスクリーニングして、職場内クラスタをあぶり出したことで、潜んでいた感染者が見つかった、ということのようです。
オーバーシュートにみえますが、起こるべくして起こった感染者数です(ですよね、王さま?)。
意外に……、と言っては誠に失礼ですが、モロッコは決断と行動が早く、戦略運営においてもそつがないのです。
外出制限がなくなったものだから、よく散歩するようになりました。
そこで今回は、その際に聞いた「日本人とモロッコ人の仕事観の違い」のお話を。
十年以上前、ここエッサウィラの町にAさんという日本人女性がやってきて、お花屋さんを開こうとしたそうです。
たまたま、その開店準備を見たモロッコ人がいたのですが、彼は今さら、
「そういえば、この町には花屋が一軒もない」
というブルーオーシャンに気づき、即断即決即工事で、なんとAさんより先にお店をオープンしたのです。
二番煎じが一号店より先にお店を開くという、掟破りなスピード経営です。
しかもこの模倣店の場所が極めて巧妙、というか策士。
Aさんのお店がある横丁の、入り口でした。
「このあたりに、花屋さんができたと聞いたんだけど……」
と、訪ねてくる人がいれば、
「へい、いらっしゃい!こちらです」
とばかりに、横丁の入り口で根こそぎさらってしまう「入り口戦略」。
アフターサービスも怠りなく、
「奥の花屋はぼったくるので、注意してくださいね」
あることないことを言いふらす、口コミマーケティング。
そして、Aさんの工夫を凝らしたフラワーアレンジメントやカード類のデザイン等、真似られるものはすべて真似る徹底した模倣ぶり。
それにもまして秀逸だったのは、心理戦です。
Aさんのお店の前にゴミを捨てるという、地味な嫌がらせに励みます。これは効きました。
極めつけは、窓に置かれた「排泄物の詰まった袋」。
あんた、小学生かっ!
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最後に勝負を分けたのは「おもてなし」の力だった >
更新:11月21日 00:05