2020年04月17日 公開
2023年07月12日 更新
顧客であるアパレル企業の余剰在庫を買い取って販売する倉庫会社もある。海外のハイブランドを中心に扱い、成田空港から東京都心部への入り口に当たる江戸川区の葛西地区に6つ、江東区の新砂に1つの拠点を構える〔株〕オーティーエスだ。
「リスクを分散するため、特定の業界に特化した倉庫会社は珍しいのですが、当社はファッション業界に特化することによって、他の倉庫会社にはない高付加価値なサービスを提供しています」(オーティーエス社長 田中優一郎氏)
例えば、日本語化して洗濯表示も加えたタグの取り付け、補修、ECサイトに掲載するための写真撮影、越境ECでの販売など。時計も扱っており、社内に時計を修理する職人までいる。
そんなオーティーエスが、顧客企業の在庫問題を解決するために提供しているサービスが「カイテン倉庫」だ。
単純に考えれば、余剰在庫を抱えないためには発注量を減らせばいいわけだが、それでは売れ筋の商品がすぐに品切れしてしまう。では、売れ筋の商品だけを多く作って店頭に並べればいいのかと言えば、そういうわけにもいかない。品揃えが悪いと、店舗の魅力が落ちるからだ。商品の消化率改善のためには、データをもとに、売れ筋と見せ筋の商品、それぞれの適正な発注量を判断することが必要だ。それでも売れ残った在庫は、アウトレットECや越境ECで販売。それでもまだ売れ残った在庫は、オーティーエスが買い取る。カイテン倉庫は、これらをトータルで請け負うサービスである。
「店舗で売れ残った商品が倉庫に返ってくると、アウトレットなどに再出荷するのですが、それでも売れ残る。そうして在庫過多になって倒産するお客様を10社以上見てきました。在庫は資産に計上されるので、決算を見ているだけでは、過多になっていることに気がつかないこともあるんです。けれども、在庫を管理している当社にはわかります。そこで、お客様の在庫問題を解決するサービスを始めたのです。余剰在庫を買い取ることは、当社が在庫を抱えることになるので、短期的には当社にとってマイナスになります。しかし、お客様とのお取引きが長く続くことによる中長期的なプラスのほうが大きいと考えています」(田中氏)
在庫が過多な顧客企業に声をかけ始めた当初は、必ずしも良い反応が返ってきたわけではなかったそうだ。そこで田中氏は、『在庫監査官 大橋優一』という、在庫がいかに経営を圧迫するかを小説仕立てで説明した小冊子を作って配った。
「売上げを上げようと、返品された商品の再出荷を繰り返すと、価格は下がっていくのに、物流費はかさんでいき、売れても赤字になります。そうしたことを説明した小冊子です」(田中氏)
買い取った商品は、半年に1回、2日間、パートも含めて約850人いる従業員や会員向けのクローズのセールで販売している。
「常設の自社ECサイトを作り、会員制(クローズ)で販売したいとも思っていますが、ブランド価値を毀損するのではないかという懸念など、お客様の意向もありますから、話し合いながら進めていきたいと考えています」(田中氏)
更新:11月25日 00:05