2019年03月10日 公開
2023年03月10日 更新
3月2日(土)、表参道ヒルズ(東京都渋谷区)に『D-VEC TOKYO EXCLUSIVE』がオープンした。『D-VEC』は、釣り用品のブランド『DAIWA』を中心にスポーツ用品の製造・販売をしているグローブライド〔株〕が2017年に発表したファッションブランド。なぜ、スポーツ用品のメーカーがファッションブランドを立ち上げたのか? 責任者を務める小林謙一氏に聞いた。
小林氏は小学生のときから釣りを始め、大学では水産学部で学び、釣り用品を扱うグローブライド(当時はダイワ精工〔株〕)に入社して、鹿児島駐在時代には毎週土日に釣りに行っていたという、大の釣り好き。アパレルとも、釣り用品の一つとして接点ができた。過酷な環境の中でも快適で、動きやすく、撥水性や防水性に優れているのが、釣り用のアパレルの特長だ。
「当社は創業50年を機に、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんに入っていただいて、リブランディングを行ないました。そして、2009年に社名やロゴも変更し、新しいブランドを広く認知していただくために、アパレルを強化することになりました。
そのとき私は、アパレルも含めた、釣り竿と釣りリール以外の釣り用品の企画の責任者を務めていました。そのため、経営陣や佐藤さんたちと一緒にプロジェクトを進めるメンバーに呼ばれたのです。
ちょうど『釣りガール』という言葉がトレンドになっていた時期で、表参道に期間限定ショップをオープンさせたりもしたのですが、11年の東日本大震災を受けて、プロジェクトは中断しました。私自身も、11年から5年間、経営企画室に移っていて、アパレルから離れていました」(小林氏)
同社が再びアパレルを強化したのは2017年。新ブランド『D-VEC』を立ち上げ、原宿のキャットストリートに1号店をオープンさせた。
「キャットストリートの店舗が10代後半~20代のお客様を中心にしているのに対し、今回、表参道ヒルズにオープンした店舗では、それよりも高い年齢の方々に向けた商品を揃えています。
釣り用のアパレルというと、機能性は高くてもダサいというイメージを持たれている方がいると思いますが、『D-VEC』はファッショナルブルで、街中でお洒落に着ていただけます。近年は猛暑の夏が多く、ゲリラ豪雨も多いなど、都会でも環境が過酷になってきています。だからこそ、釣り用のアパレルで培ってきた技術が、都会でも活きると考えています」(小林氏)
例えば、生地の縫い目からは、雨水が浸み込みやすい。それを防ぐために内側にシームテープを貼ると、着心地が悪くなる。そこで、縫い目をなくすため、1枚の生地で1着を織り上げる技術を開発した。フードの大きさをダイヤルで調整することで、顔との間の雨水が入り込む隙間をなくすことができ、しかも視界も妨げないようにした商品もある。
柄が違う生地を縫い合わせるのではなく、1枚の生地の中で柄を変える織り方を開発
「『D-VEC』の商品には折り畳み傘もあるのですが、それは、柄の部分だけで6つの特許を取得しています。釣り竿に使うカーボンを使っているので非常に軽く、大きさも、男性ならスーツのジャケットの内ポケットに入るくらいです。開発に3年をかけました。
服でも2年くらいかけて開発しているものがあります。アパレル業界の常識では考えられないことを、私たちはやっていきます。
本社内に、会議室を改装した縫製工場を作り、試してみたいことは、そこですぐに試せるようにしました。キャットストリートの店舗では、その社内の縫製工場で商品を2着だけ作って並べ、売れたらまた2着だけ作る、ということをしたこともあります」(小林氏)
表参道ヒルズの店舗のコンセプトは「シンプル」。ただし、「本物感」にこだわっている。
「例えば店内にあるロゴもカーボン製なのですが、このために、わざわざ金型を作りました。商品を掛けている什器にもカーボンを使っているので、非常に軽く、半永久的に使えます。天井からラックを吊るすのに使っているのは、細くて強い釣り糸です。
濡れた路面でも滑りにくいソールの靴を、実際に履いて体験していただくコーナーもあります」(小林氏)
また、店舗内にある商品のうち、『D-VEC』ブランドのものは半分で、あとの半分は釣り具用品の『DAIWA』ブランドであることも特徴。店内に置かれたトルソーがまとっているのは、両方のブランドを組み合わせたミックスコーデだ。
「アパレル業界は調子が良くないと言われます。しかし、他社にはない技術を使った高機能な商品を、業界の常識に囚われずに開発・販売すれば、そんなことは関係ありません」(小林氏)
『D-VEC』の商品はECでも販売されている。また、百貨店などで取り扱われることもあるそうだ。
更新:11月22日 00:05