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ファッションサブスク「メチャカリ」が黒字化を達成できた理由とは

2019年07月02日 公開
2023年03月02日 更新

『THE21』編集部

「カニバリ」を起こさず新規市場を創出


メディアラウンドテーブルで話すメチャカリ部部長・澤田昌紀氏

 

 7月2日(火)、〔株〕ストライプインターナショナルの東京本部(中央区)にて、同社が運営するファッションサブスクリプションサービス「メチャカリ」について事業責任者の澤田昌紀氏が説明するメディアラウンドテーブルが開催された。同社は、「earth music&ecology」や「koe」、「E hyphen world gallery」など、国内外で30以上のファッションブランドを展開している。

 

 メチャカリは、月額5,800円(税別)で、約50ブランド(うち約30が自社ブランド)、1万種類以上のファッションアイテムを何度でも借りられるサブスクリプションサービス。2015年9月にサービスを開始し、今年5月にアプリのダウンロード数が累計100万件を突破した。有料会員数は約1万3,000人。「サブスクリプションサービス自体で収益化できているものは、ファッション以外も含めて、少ない」(ストライプインターナショナル広報部)という中で、昨年、単月黒字化を達成し、広告宣伝費を除けば年間でも黒字化に成功したという。

 澤田氏によると、黒字化できた要因の一つは、ユニークなビジネスモデルにある。有料会員が支払う料金の他にも、売上げを上げているのだ。

 洋服を借りるというと、普通は中古品を想像するだろうが、メチャカリが扱うのはすべて新品。調査をすると、8割の人がファッションの中古品に抵抗を感じるという結果が出たからだ。では、返却された洋服はどうするのかというと、自社ECサイトや「ZOZOUSED」で中古品として販売している。その売上げもメチャカリに入ってくるというわけだ。

 また、物流や在庫を自社ECと共通化することにより、コストを下げていることも、黒字化の要因となっている。

 先ほど、「広告宣伝費を除けば年間でも黒字」と書いたが、広告宣伝費については、今年は昨年よりも3億円増やすという。従来から、会員が増える秋にテレビCMを放送しているが、今年はそれに加えて、3月にも放送した(ちなみに、秋に会員が増えるのは、コートを購入すると価格が高いので、メチャカリに割安感を強く感じやすいためだそうだ)。

 メチャカリの初めてのテレビCMは2016年3月の放送で、デビューシングルをリリースする前の欅坂46を起用した。「『洋服は買うもの』という既成概念を打ち破り、ブランド認知を一気に高めるため、話題性を重視した」と澤田氏。「サブスクリプションなので、もし広告宣伝をやめたとしても、すぐに売上げが減るわけではない」と言うが、目標とする会員数20万人に向けて、広告宣伝にも注力し続けると話した。

 メチャカリについて、もう一つ気になるのは、ストライプインターナショナルの中心的な事業である洋服の販売と、カニバリズム(共食い)を起こすのではないか、ということだろう。

 結果的には、メチャカリの会員のうち、同社の既存顧客は30%に留まり、70%は新規顧客になっているという。もともと、ファッションが好きな人が使うだろうと想定していたが、ふたを開けてみると、仕事や子育てでファッションに時間をかけられない20~30代の女性など、店舗に足を運ばなかった人たちが、手軽に使えるサービスとして利用するケースが多かったのだ。60日間借り続けると、そのアイテムをもらうことができ、また、購入することもできるので、試着を目的とする会員もいるそうだ。

 そこで、メチャカリは、時間がない会員のための利便性を高めることにした。その一つが、昨年10月に導入した「パーソナライズドスタイリングAIチャットボット」だ。「服を選ぶ時間がない」という会員のために、その人に合ったコーディネートやアイテムを提案するもので、開発はチームラボ〔株〕が行なった。

 また、「返却が面倒」という声に応えて、今年6月にヤマト運輸〔株〕が提供する「配送連携API」を導入し、送り状の記載を不要にした。

「5,800円という価格は、サブスクリプションサービスとしては高いかもしれないが、洋服を何度でも借りられるサービスとしては低いと思う。この価格はそのままに、より利便性を高めていきたい」と澤田氏は話した。

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