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創業1年強で大阪ガスと業務提携。急伸するスタートアップにその理由を聞く

2019年12月25日 公開
2019年12月25日 更新

江尻祐樹(ビットキーCEO)

 

スタートアップが大企業と提携するポイントとは?

 ――お話を聞くと、大阪ガスの上層部の人を紹介してもらえたことが、大阪ガスとの業務提携に至った要因の一つのようですね。他の企業についても同様のケースはあるのでしょうか?

江尻 不動産会社などのトップマネジメントの方にもお会いできています。そこで当社の事業計画や進捗をプレゼンして、多くの場合、興味を持っていただけています。

 ――様々な企業の上層部の人を紹介してくれる顧問やアドバイザリーは、どうやって集めたのですか?

江尻 当社は創業から約3カ月で3億円強の資金調達をしているのですが、機関投資家はほとんどなく、ほぼすべてエンジェル投資家からです。意図的に、不動産業界など、各業界で影響力を持っていらっしゃる方々から出資していただきました。

 一般的にスタートアップが大手企業と提携する場合、アクセラレータープログラムやマッチングイベントに参加して、現場担当者と知り合うことから始めるのですが、それだとスピードが出ません。トップマネジメントの方にお会いできることは、事業展開のスピードを速めるために重要です。

 ただ、本当に実力が問われるのは、各企業のトップマネジメントから現場につないでいただいてからです。経営企画部などの課長クラスの方とがっちり組んで、彼らが会社の中で稟議を通しやすくするための支援をしっかりとしています。そこが、我々の得意なところでもあります。もちろん、先方の会社の中に、我々は「コーチ」と呼んでいますが、当社との提携に高い熱量で取り組んでいただける方がいることも重要です。

 ――社内稟議を通すポイントがあるわけですか?

江尻 それは色々とあるので簡単には説明できません(笑)。例えば、営業部門の方に「YES」と言っていただきやすくするにはどうすればいいのか、財務の方に「YES」と言っていただくにはどうすればいいのか、といったことを、一緒になって考えるということです。

 ――bitlockが他社のスマートロックよりもかなり安いことも、大阪ガスと提携できた要因の一つだということですが、安くできている理由はなんでしょうか?

江尻 一つは、bitlockの販売以外にも大きな収入源があるビジネスモデルを築いていることです。先ほどココネットの「置き配」の例を挙げて、他にも十数社以上と既に提携しているというお話をしましたが、例えば、クリーニングやペットシッター、家事代行など、不在時に非対面でサービスを行なう事業者と提携をして、その事業者からチケットの利用数に応じて料金をいただくビジネスモデルなのです。

 とはいえ、bitlockの販売でも利益は出ています。他の事業者に提携していただくためには、まずbitlockが設置されている戸数が多くなければなりませんから、万単位で生産をしています。そのため、量産効果が大きく、価格を安く押さえられているのです。他社はメーカーの発想で、確実に売れると見込んだ数だけを生産するので、単価が高いわけです。

 おそらく、他のスマートロックメーカー各社が3~5年ほどかけて販売した各製品の累計台数よりも、当社が2019年4月の発売からの8カ月間で売ったbitlockの台数のほうが多いと思います。

 ――それだけ生産して、在庫は抱えていない?

江尻 もちろん短期の在庫は抱えますが、中長期的に眠らせているものはありません。

 ――大阪ガスのような提携先を通じての販売と、直接の販売と、どちらが多いのですか?

江尻 どちらかというと、BtoBが多いですね。

 

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著者紹介

江尻祐樹(えじり・ゆうき)

〔株〕ビットキー代表取締役CEO

1985年生まれ。大学時代は建築/デザインを専攻。リンクアンドモチベーショングループ、〔株〕ワークスアプリケーションズなどを経て、旧知のエンジニア中心に発足したテクノロジー研究会のメンバーを中心に、2018年に〔株〕ビットキーを創業。

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