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人生最後の日に後悔しないため、やりたいことを最優先する

2019年12月17日 公開
2023年01月11日 更新

星野佳路(星野リゾート代表)

「年間60日のスキー」を軸にする、星野リゾートトップの時間術

スケジュールを決めるとき、多くの人は仕事の予定から入れていき、空いた時間で遊ぼうとするだろう。しかし、国内外に39のリゾート施設を運営する星野リゾート代表・星野佳路氏は対極をいく。

最初に年間スケジュールに組み込まれるのは趣味のスキーの予定、しかも、年間60日もだ。多忙を極める経営者でありながら、なぜこのような時間の使い方ができるのだろうか(取材構成:杉山直隆)。

 

「今しかできないこと」が時間の軸を決める

9年前から、星野氏は仕事の予定より先に、趣味のスキーの予定を入れている。年間60日を目標にして、最優先で日程を調整。この大胆なやり方によって、星野氏の時間の使い方は劇的に向上したという。

「『雪あり月』になると、ほとんど東京にはおりません。冬は日本のどこかの雪山におり、夏は、季節が逆になる南半球のアルゼンチンやニュージーランドに行きます」

しかも、現地にいるときは、午後にテレビ会議に参加することはあるが、午前中はまったく仕事を入れないそうだ。

「いつ、スキー場が絶好のコンディションになるかわかりませんからね。夜に雪が降って、朝はフカフカのパウダースノーが積もっていて晴れている、という状態が最高なのですが、そんなときに仕事が入っていたら、せっかくの機会を逃してしまいます。

逆に吹雪いてしまうと滑ることができないので、『明日吹雪くから会議できるよ』と社員に伝えるのですが、あきれられています(笑)。

昨年は、『夜中でいいから、直接会って会議したい』と言われたので、スキー場に来てもらい、会議の後、一緒にスキーをしたこともありました」

星野リゾートは、トマムリゾートやアルツ磐梯リゾートなど、スキー場も運営している。星野氏がスキーをするのも、仕事の一環かと思いきや、まったくもって違うという。

「スキーをすると思考力が上がるのでは?などと言われますが、滑った後は疲れてしまって、思考の質は下がります。スキーに行くのは、単純に今一番やりたいことだから。今しかできないことだからです」

 

死から逆算して考える後悔しないためにすべきこと

星野氏が年間60日のスキーを優先するようになったのは、50歳のときからだ。

「弊社は、私で4代目。みんな高血圧と心筋梗塞の家系で、80歳までいかずに亡くなっているのですよ。そして、私も40歳を過ぎてからだんだんとコレステロールの数値が上がり始めて、同じパターンをたどっているのですね。

念のため、対策は打っていますが、限界はありますから、80歳ぐらいで死ぬ可能性が高い、と自分では思い始めました」

そう意識した時、星野氏は「人生最後の日に後悔がないようにしたい」と考えるようになったという。

「『何をしていなかったら、最期に後悔するのか』を考えたのです。そのとき思ったのが、仕事の面で後悔することはない、ということ。それよりも、今のままだと、『もっとスキーを滑っておけばよかった』と後悔する、と思ったのです。もう、そうなったら、最悪だなと。

寿命が80歳と仮定すると、あと30年ありますが、ガンガン滑ることができるのは前半の15年でしょう。それなら、この15年間は、とにかくスキーを最優先し、残った日だけで仕事をしよう。そう決めたのです」

年間60日と数値目標を決めたのは、漠然と「やりたい」だけでは実現できないからだ。

「60日入れることは、会社の業績目標よりもこだわっています(笑)。数値を設定したことで、今のところ目標を達成し続けられています。

 結局、人は『いつかやろう』では、本気になれません。仕事も趣味も目標を立てて真剣にやるから面白いのです」

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著者紹介

星野佳路(ほしの・よしはる)

星野リゾート代表

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社。シカゴにて2年間、新ホテルの開発業務に携わる。89年に帰国後、家業である㈱星野温泉に副社長として入社するも、6カ月で退職。シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わったのち、91年、ふたたび㈱星野温泉(現・星野リゾート)へ入社、代表取締役社長に就任。

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