2019年11月01日 公開
2023年02月24日 更新
「生保・損保2冠王」の伝説の営業マンと呼ばれる一戸敏氏。経験ゼロでいきなり営業の世界に飛び込んだにもかかわらず、またたくまにトップ営業マンになり、現在では300人規模の会社を率いる経営者でもある。そんな氏の著書『あの営業マンが選ばれる「本当の理由」』から、今すぐ役立つ営業の極意を紹介する。
「トップ営業マンはお客様に対して責任を持つべき」というのが私の持論ですが、それは、決してお客様に唯々諾々と従うべきだという意味ではありません。
お客様に対して責任をもつということは、万一、お客様に間違いがあったら、勇気を出してそれを指摘し、お客様に正しい方向を示す役割を担っている、ということでもあるのです。
仕事柄、私は社会的な地位が高く、経済的にも恵まれたお客様とのおつきあいが多いのですが、ある職業の方だけは意識的に避けてきました。おつきあいするかどうかを職業で選ぶなんてナンセンスだと思われるかもしれませんが、私なりの理由があります。
それは、もうずいぶん昔のことですが、お客様の態度を腹に据えかねたことがきっかけでした。
その方はマスコミにも登場するようなその業界の著名人でした。アポイント当日、13時に訪問するよう指定されていたのですが、約束の時刻になっても姿を見せません。その方が私の前に現われたのは、2時間後のことでした。
しかも、私の前に腰を下ろすなり「今日は何だっけ」と言われて、さすがに頭にきました。実は、その日、生命保険の診査をするため医師に同行してもらっていたのですが、次の約束に間に合わなくなったため、先に帰ってもらっていたのです。私だけならともかく、同行してもらった医師にも迷惑をかけながら、謝罪の言葉もないのはあまりに不誠実ではないか、と私は抗議しました。
すると、その方は「保険の営業マンふぜいが何を言う」と、さらに高圧的な態度で謝るそぶりも見せなかったのです。その後も数度、その方以外でも同じようなぞんざいな扱いを受けることがあり、以来、保険を取り扱う人間には魅力的な市場といわれるその業種の方はあえて避けるようになったというわけです。
保険の営業マンにとって、経済的に恵まれた富裕層はいわば上客です。たとえお客様の態度が気に食わなかったとしても、契約が取れるのなら2時間の遅刻くらい目をつぶればいいという考え方もあるでしょう。しかし、私はそういうお客様には選ばれなくても仕方がないと思いました。アポイントに2時間も遅刻したうえ、謝罪もできないような人に責任をもつ自信がなかったのです。
更新:11月25日 00:05