2019年12月10日 公開
2023年02月24日 更新
例えば、就職したいと考えている会社が、将来性がある良い会社なのか。取引先の会社は、これから成長が期待できるのか。いまはネットで調べれば、簡単になんらかの情報を得ることができるが、それは「誰か」の知見やものの見方だ。
それを参考にしながらも、自分自身で実際にその会社のよしあしを見抜く”確かな目”を養っていくことが大事だと、経営コンサルタントの小宮一慶氏は言う。具体的には、どこをどう見ればいいのか。一例を教えてもらった。
※本稿は、小宮一慶著『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
経営の原型は、「行商のおばさん」を考えればいい、と私はよく言っています。
おばさんは浜で魚を仕入れ、それを遠くまで運んで行って売ります。なぜ近場の浜で売らないのか。浜では新鮮な魚が手に入りやすいので、付加価値がつかないからです。新鮮な魚がなかなか手に入らない町や山のほうまで行くから、買っていただけるわけです。
付加価値がつくところに需要がある、すなわちお客さまがいる。そこで商売をして、売上の一部は利益になり、おばさんの生活費となり、残りは再投資に回す。この繰り返しです。実はどの会社も本質的には、この「行商のおばさん」と同じことをやっているのです。付加価値のある商品を持ち、それをお客さまへ販売し、代金を回収して、利益を得て、再投資する。
このように、いちばんシンプルな形で考えると、経営の中核となるのは、モノづくりをしている生産部門、仕入れをしている部門、販売サービス活動をしている部門、代金回収をしている部門、再投資をしている部門ということが分かります。実際に売上を上げ、利益を生み出しているのはそこ。つまり、そこがしっかりしていれば、経営は成り立つのです。
しかし、人が増えて会社が組織になると、処理しなくてはならない事務仕事が増えます。
給料を払わなければいけませんし、それには労働時間を把握しなければいけません。人を採用するとなると、そのための実務的な手続き処理も生じます。
そこで、さまざまな事務処理をまとめて集中的に行ったほうが合理的だということになります。そうやって、総務だとか人事だとか経理だとか企画だとか、それぞれの業務を集中して担当する部署ができます。
実際にモノづくりや販売・サービスを行っている実働部隊に対して、「管理部門」がいろいろできていきます。会社が大きくなったがための「必要悪」なのです。
会社の規模が大きくなるにつれ、事務を担う、その管理部門がだんだん力を持つようになっていきます。なぜなら、そのような部署の仕事はけっこう難しく、頭の良い人が集まりやすい上に、人の管理をしているからです。
しかし、本来、管理部門は現場の人たちをバックアップするサポート部門なのです。
組織が細分化された会社という形態しか知らない人には、会社の中核として大事にすべきはどこか、経営の基本になっているのが何なのか、ということが分かりにくくなっています。
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更新:12月02日 00:05