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「意識改革研修」に期待している会社は、沈む

2019年12月03日 公開
2024年12月16日 更新

小宮一慶(経営コンサルタント)

 

変えるべきは、意識ではなく、行動

 モチベーションアップ研修などと言って、意識改革をしようとする会社もありますが、変えるべきは意識ではなく、行動です。行動をまず変えるのです。お客さまが喜ぶ、働く周りの仲間が喜ぶ小さな行動に集中させるのです。そして、その上で、行動の基準となる会社の理念やビジョンをしっかり説明するのです。

 ただし、本当に理念やビジョンが理解できるのは、働きがいを感じている社員だけです。

 そのためにも、まず行動を変え、それにより結果や評価を変え、そのことで働きがいを感じてもらうのです。

「理念教育をお願いできませんか」という依頼が来ることもありますが、私は「社員さんが働きがいを感じていないと無理です」とお断りします。逆に、働きがいを感じている人が多ければ、自然と理念は伝わっているはずです。

 理念やビジョン、ミッションには、自分たちの会社が何のために存在するのか、いちばん大切なことが掲げられています。それが分かって行動できるということは、「何のために働くのか」ということにブレがなくなるということです。

 グーグル社の社是として有名なフレーズがあります。「邪悪にならない(Donʼt be Evil)」。

 これが社員の心の中にしっかりと刻みつけられていれば、細かなルールを決めるよりもはるかに強い行動規範となるわけです。

 しかし、繰り返しますが、従業員がやりがいを持ってイキイキと働いてこそ理念が浸透するのです。そのためにも、トップや経営幹部がその理念を忠実に守り、自らが模範になること、社員にお客さまが喜ぶことなど小さな行動を徹底してやらせることが大切なのです。

 理念の浸透度合いで、その会社の実力が分かるものです。

著者紹介

小宮一慶(こみや・かずよし)

経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表

1957年生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。米ダートマス大学タック経営大学院にてMBA取得。91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年、名古屋大学経済学部客員教授に就任。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。著書に『「金利上昇」に勝てる経営』(ビジネス社)ほか多数。

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