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発想がイマイチな人は「ある勘違い」をしている

2019年10月09日 公開
2023年02月24日 更新

野口悠紀雄(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問/一橋大学名誉教授)

 

明かりのあるところを探せ

クラウスは、この立場をさらに推し進め、つぎのように言います。

「暗い夜道で車のキーをなくしたことに気づいた。どこを探せばよいか?」

これに対する物理学者の答えは、「近くの街灯の下を探せ」というものです。なぜなら、そこで鍵をなくしたかどうかはともかく、見つかりそうな場所はそこしかないからです。

この答えは、一見したところ、いかにも乱暴なものと思えます。しかし、よく考えてみれば、合理的なものです。「もし道具が金ヅチしかなかったら、人はどんなものもクギとして使うだろう」というのと同じことです。クラウスは、「明かりのあるところを探せ」という原則にしたがって、既知の道具を用いることにより解かれた多くの物理的問題を紹介しています。そして、つぎのように言います。

 

物理学においては、新しいアイディアよりは、使い物になるアイディアの方が重んじられるのである。かくして、過去に役だった概念や定式化、テクニック、“描像”をあれこれいじくっては、山のような新しい状況に適用してみることになる。

つまり、「使えるネタはとことん使え。うまくいったら二匹目のどじょうを狙え」というわけです。

 

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著者紹介

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)

早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問/一橋大学名誉教授

1940年、東京都生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、イェール大学Ph.D(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2011年より現職。著書に、『「超」整理法』(中公新書)、『「超」AI整理法』(KADOKAWA)など、ベストセラー多数。

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