2019年10月07日 公開
2022年10月25日 更新
――稲田社長は、もともとリクルートに勤めていました。建設・建築に関わる仕事だったのですか?
稲田 まったく関係ありませんでした。
――なぜ、今の事業を始めようと?
稲田 建設・建築業界の生産性の低さは、日本で最も大きい社会課題の一つではないかと思ったんです。市場の大きさは日本で2番目なのに、一人あたりの生産性は最も低い。ということは、建設・建築業界の生産性を高めれば、日本全体の生産性が高まるじゃないかと思いました。
――そこに気づいたきっかけは?
稲田 リクルートで新規事業の立ち上げを担当していたので、色々な業界のことを調べている中で、興味を持ちました。
もう一つ、建設・建築業界で起業した理由は、旅行について調べるならこのサイト、飲食店を探すならこのサイトというように、業界ごとに自然想起するITサービスがあるのに、建設・建築業界ではそういうものが思い当らなかったからです。
――建設・建築業界で起業するにあたって、コミュニケーションツールを作ろうという発想はどこから?
稲田 業界のことが何もわからず、僕と共同創業者の金近望にあったのは開発能力だけだったので、まずはリフォーム会社の検索サイトを作ることにしました。僕自身が実家をリフォームしなくてはならなくなったときに、どのリフォーム会社がいいのか、まったくわからなかった経験があったからです。
すると、自然とリフォーム会社とのつながりが増えてきて、ITについての相談を受けるようになりました。その中で、施工管理に困っているというニーズを知りました。ここに至るまで、1年半くらいかかりましたね。
――リフォーム会社の検索サイトよりも、「&ANDPAD」のほうが、成長性があると思った?
稲田 というよりも、業界全体の生産性を上げるなら、「&ANDPAD」からやったほうがいいだろうということです。検索サイトは、我々がやらなくても、他に素晴らしいサイトがたくさんありますし。
――「施工管理に困っている」というのは、具体的にはどういうことだったのでしょう?
稲田 業者さん同士で、図面変更など、情報の伝達漏れによる「言った言わない」というコンフリクトが生じたり、ですね。そういうものだと思って、疑問を持たずに仕事をされている方も多いのですが、同じ請負業であるシステム開発をした経験のある僕たちから見ると、「もう少しなんとかなるんじゃないかな」と感じるところがありました。
――現場で起こっていることを知るために、現場に入ったりもしましたか?
稲田 しました。今も日本各地の建設・建築業界の方にお話を聞いていますし、現場出身のメンバーも当初からいます。今は20人くらいになっていますね。
――「&ANDPAD」の開発には、どれくらいかかりましたか?
稲田 テスト版を出してから正式にローンチするまで、9カ月くらいかかりました。色々な会社の方から聞いた課題を抽象化して、業界で汎用的に使える形で提供するのが難しかったので、時間がかかってしまいました。
――同じことでも、会社によってやり方が違うということですか?
稲田 全然違うんですよね。わかりやすく言えば、工事の規模によっても業務フローが違いますし、1から作る注文住宅の場合と決まった規格である分譲住宅の場合でも違います。数カ月かけて1軒の家を建てる会社と、エアコンの取り付けを1日に何件も行なっている会社では、業務のスパンも全然違う。
新築では工程表が一番大事で、リフォームではリアルタイムのチャットのほうが大事というように、業態によって特に重要な機能が少しずつ違うので、業態に合わせて各機能のオン/オフの切り替えができるようにもしています。
また、カスタマーサクセスを追求するため、我々が業務フローのコンサルティングをすることもあります。
――コンサルティングというと?
稲田 例えば、「なぜか粗利が減ってしまう」という悩みを抱えている会社があるとしましょう。
経営者は現場のことを現場監督に任せきりにしがちなのですが、予定になかった工事が必要になって資材を追加で発注するということが現場ではよく起こるので、粗利が減ることはよくあるんです。システム開発で要件変更がよく起こるのと同じで、これは請負業の宿命です。工期が延びても、人件費が増えて、粗利が減ります。
そこで重要なのは、追加の発注など、原価が上がることが発生したら、経営者がそれをリアルタイムで察知できること。承認のプロセスを設けるなど、そのための業務フローの改善をご提案しています。
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更新:11月22日 00:05