安定性が不動産投資の魅力とはいえ、もちろんリスクもある。
「一番大きいのは、やはり空室リスクです。入居者が退去して次が決まらなければ、家賃収入がストップしてしまいます。ですから、入居者が決まりやすい立地と競合物件に負けないリーズナブルな家賃設定が最重要です。それでも入居者が決まらなければ家賃を下げることになりますが、先ほど述べたような都心まで30分以内の駅近物件なら、数千円下げればすぐに決まります。ですから、周辺相場よりも少々値下げしても月々の収支がプラスになるように、シミュレーションをしておくとよいでしょう」
家賃は、街の移り変わりによって、値下げせざるを得なくなる場合もある。
「都心ではあまり心配ありませんが、地方郊外では、物件が古くなるにつれて家賃を下げないと入居者が決まらなくなる傾向があります。また、新しい賃貸物件が多数建設されているエリアでは、供給過剰になって家賃の値崩れが起こることがあります。そのため、物件周辺の空地の多さや再開発計画など、入手できる情報から街の将来を想定しておくことも必要です」
室内の設備が故障したり老朽化したりして、修繕や交換が必要になることも。そのコストも考慮しておく必要がある。
「故障した設備の修繕や交換の費用はオーナーの負担です。とはいえ、これらは内容も時期も、だいたい予想がつきます。ワンルームマンションなら、エアコンや給湯器の交換と壁紙の張り替えが主だったところです。エアコンと給湯器の寿命はだいたい10~15年、費用は5万~8万円程度。壁紙は7~8年で、10万円程度と考えておけばよいでしょう」
さて、いざ物件を購入するとなると、頭金と借入額の割合をどうするかも悩みどころだ。どのように決めればいいのだろうか。
「もし家賃が少々下がった場合でも、家賃収入からローン返済額と経費(管理費、修繕積立金、固定資産税など)を引いてプラスになるならば、金額にこだわらず借りられるだけ借りてかまわないでしょう。返済期間も、設定できる最長の期間で借りたほうが得です。短く設定すると月々の返済額が高く、手取りの収入が少なくなり、突然の修繕など不測の事態があると足が出てしまいます。なので、最初は返済期間を長くして返済額に余裕を持ってスタートし、余裕が出てきたら、その都度、こまめに繰り上げ返済をするのが賢い方法です」
業者によっては、収支のシミュレーションを行なってくれるところもある。
「ただしその場合でも、必ず自分で裏を取ること。平米数や築年数が同じ近隣の物件を調べて、その物件の家賃が相場に合っているかを確認しましょう。10年後、20年後の家賃の相場も確かめたうえで、返済にムリのない物件を選ぶことです」
投資用物件とマイホームのどちらを先に買うかも、多くの人が悩むところだ。購入する順番によって、ローンの組みやすさは変わるのだろうか。
「住宅ローンのほうが借りやすいことは確かです。ですから、先に投資用物件のローンを組んでおいて、そのあとで住宅ローンを組んだほうがいいという考え方もあります。とはいえ、マイホームは家族とともに考えるべきテーマですから、投資を先にすることが家族の意思に沿わないようであれば、マイホームを優先させたほうがいいと、私は思います」
どちらの順番を選ぶにせよ、サラリーマンならではの信用力は最大限に活かしたいところだ。
「スルガ銀行の不正融資問題以降、一棟物件に関しては金融機関の審査が厳しくなりました。しかし、区分に関してはさほど変わりなく、現状ではまだ融資を受けやすい環境が続いています。貯蓄がある程度あり、年収400万円以上で3年以上同じ会社に勤めていれば、金額によりますが、ローンを組むことが可能でしょう。夫婦共働きなら、さらに信用が高くなります。場合によっては、一棟物件でも融資してもらえる可能性もあります」
更新:11月22日 00:05