では、独自のスタンスを維持してきたイギリスが、なぜEUを離脱する必要があるのか。
それは、当時のキャメロン政権に対して、ドイツがEUへの予算増とシリア難民の受け入れを要求してきたからです。
当初、キャメロン前首相は、国民投票の結果をドイツとの交渉の道具にするつもりでした。
「離脱派は4割くらい」と高をくくっていたのです。しかし、蓋を開けてみれば離脱派が過半数に達していた。
一時期は、EUに代わる巨大市場として中国に期待を寄せましたが、悪化する米中関係を考えると、中国に肩入れしてアメリカに睨にらまれたくない。イギリスは、進退窮きわまってしまったのです。
イギリスが生き残る道があるとすれば、日本主導のTPPへ加盟し、環太平洋地域に市場を求めること。南太平洋にピトケアン諸島という海外領土を持つ同国は、TPP加盟が可能です。
また、中国封じ込めを目的とした日・米・豪・印の軍事協力体制にイギリスが加われば、太平洋版のNATOになる。すでにイギリス軍と自衛隊の共同訓練も始まっています。日本にとっても、米国以外のパートナーを得ることは、望ましいのです。
写真:昨年9月、イギリスと日本は共同訓練を実施。安倍首相は、ブレクジット後のイギリスが、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に加盟することを歓迎している。国論を二分し、先行き不透明のブレクジットに光明は差すのか。出典:自衛艦隊ホームページ
2019年3月号より
更新:11月22日 00:05