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売上と利益だけではわからない?誰もが見逃しがちな「決算書分析」の要点とは

2019年06月29日 公開
2022年05月25日 更新

石島洋一(公認会計士)

いくらの投資に対し、いくら儲かったのか

しかし、実はこの問題自体に問題があります。いくらの投資をして経営をしているのか、つまり「投資額がいくらか」という要素が抜けているのです。

決算書分析でまず目をつけるべきところは、投資額に対する利益の割合、すなわち「投資利益率」です。経営の基本は少ない投資で多くの利益を上げること。それを見るには、投資利益率を計算する必要があるのです。

もし、A社、B社ともに投資額は200億円だとしたら、どうでしょうか。

A社 投資額200億円 売上高200億 純利益20億

B社 投資額200億円 売上高400億 純利益30億

これと純利益との割合を計算すると、A社の投資利益率は10%、B社は15%となります。こうなるとB社のほうがよいのではないかという結論が導き出されます。

しかし、もしもB社が2倍の投資をしていたら、どうでしょうか。B社は2倍の投資をしていたのに、利益は1.5倍しかなかったということになりますから、A社のほうが投資効率はよいことになります。

投資の効率性の立場から考えれば、少ない投資で多くの利益を上げることが理想的です。同じ利益を上げるなら、できるだけ投資が少ないほうがよいともいえるわけです。

決算書分析にはいろいろな方法がありますが、この投資利益率から出発する分析が最もオーソドックスな手法といえます。

 

経営分析でよく使われる「資本利益率」

A社とB社で大きく違うのはどこか。もう一度数字を見てみましょう。

A社 投資額200億円 売上高200億 純利益20億

B社 投資額200億円 売上高400億 純利益30億

投資額と売上高の関係が大きく違います。A社は投資額200億円に対して、売上高がそれと同額の200億円、B社は2倍の400億円。つまりA社は投資額のわりに売上高が少ないのです。

この関係が両社の投資利益率に決定的な違いをもたらしたのです。

ここまで投資利益率という言葉を使ってきましたが、この言葉は「資本利益率」と表現されるのが普通です。

「資本」という言葉はいろいろな意味で使われていますが、ここでは投資という意味で使用しています。

決算書分析というとどうしても「売上」と「利益」に注目が集まりがちですが、この「資本利益率」も決して見逃してはならない指標なのです。

(『ざっくりわかる「決算書」分析』より抜粋・編集)

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