2019年05月31日 公開
2023年05月16日 更新
私は、漫画『ゴールデンカムイ』(野田サトル著/ヤングジャンプコミックス)が大好きである。
冒険、バトル、謎解き、歴史、戦争、狩猟、サバイバル、グルメ、そしてセンスあふれるギャグなど、
これだけ多くの要素をてんこ盛りで取り入れて、破綻しないどころかすべてが絡み合って面白くなっている漫画を、私は他に知らない。
その中でも欠かせない重要な要素が「アイヌ文化」である。
ヒロイン(……と言うよりも、主人公・杉元佐一とのダブルヒーローと言いたくなるような凛々しくカッコいいキャラクターであるが)のアシリパさんをはじめ、作中には魅力的なアイヌのキャラクターが登場し、アイヌコタン(集落)でのシーンも多い。
この作品をきっかけにアイヌ文化に興味を持った人は多いだろうと思う。私もその一人だ。
本書の著者はその『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修者だ。漫画のファンにとっても、また純粋にアイヌ文化に興味がある人にとっても充実の内容であると思う。
漫画の中に登場する、アイヌの信仰や儀式、伝承や伝説、子供の名前の決め方、アイヌ語や料理の解説(ファンならみんな大好きな「オソマ」や「チタタプ」「ヒンナ」の話ももちろんある!)など、
深く知っておくとより漫画を楽しめるポイントが満載であった。
個人的にハッとさせられたのが、「アイヌは自然との共生を目指したわけではない」ということ。
狩猟をしたり、山で旬のものを採ったり、自然の豊かな恵みの中で生きていた彼らをそう誤解しがちなのはよくわかるし、私もなんとなくそんなイメージを持っていた。
しかし、漫画の中でも「身の周りの、人間に役立つものはすべてカムイ(神)」だとアシリパさんが解説していた通り、
都会にいても、どこにいても、「カムイ」は存在するのだ。
著者はこの点について、「アイヌとは『人間』を指す言葉で、カムイを『環境』と置き換えるとわかりやすい」と解説する。
環境と良い関係を保つことで、平穏で幸福な生活がもたらされるということだ。
これは、科学が発達した今だからこそ、私たちが忘れないようにしたい考え方の一つではないかと思う。
執筆:Nao(THE21編集部)
更新:11月24日 00:05