2019年04月22日 公開
2023年03月07日 更新
「AIがあなたの仕事を奪う」ということが声高に叫ばれる昨今。
AI時代に取り残されないために本を読んでみたところで、「結局、何ができるかよくわからない……」という人も多いだろう。
結局、AIはあなたの仕事をどう変えるのか。そもそもAIは敵なのか味方なのか。
文系出身ながら統計解析をマスターし、AIやビッグデータ活用のコンサルティングを行う斎藤広達氏に、AIが仕事にどんな影響を与えうるかについて「ざっくりと」語ってもらった。
なぜ、多くの人がAIに対して恐怖や不信感を抱きがちなのか。私はその最大の原因が、AIの仕組みが「見えにくい」ことにあると思っています。
AIの仕組みをざっくり言ってしまえば、いろいろなデータをAIに「食わせる」(AI業界での独特の表現)ことで、使える結果が返ってくる、というもの。「80%の確率で、この顧客は新商品を買います」「この患者さんがXXに罹患している確率は70%です」といった具合です。
つまり、ビジネスの世界でよく使われている様々な統計分析と基本は同じなのです。アウトプットもあくまで数字です。ただ、AIの場合、その数字が出てくるまでの過程が見えにくい。いわば「ブラックボックス化」しているから、「なんだかわからない」「どうも信用できない」という印象を与えてしまっているのでしょう。
AIの仕組みをざっくりとでも知ることで、その印象は大きく変わります。そこで拙著『数字で話せ』では、AIおよびニューラルネットワークの仕組みを、可能な限りわかりやすく解説しています。
ただ、より近道なのは「AIには何ができるかを知ること」です。それさえわかれば、自分自身でプログラムを書く能力がない人でも、「AIで何をしたいか」を伝え、仕事において実践することが可能です。そこで、ここではAI活用の具体的な事例を紹介していきたいと思います。
AI活用事例は無数にありますが、私が開発に関わったことのあるものや、モデリングのイメージができるものに絞って紹介したいと思います。つまり、「現場感を持って話ができるもの」です。
まずは、AIによる「売上予測モデル」です。
「ある顧客がこの新作のシャツを買うか?」「この新作シャツは何枚ぐらい売れるのか?」など、売上を予測するモデルです。顧客がその商品を買う確率をAIで計算し、店舗やECでの販売数量を予測します。消費財、嗜好品、金融商品、オンライン有料サービスなど、どんな商品にでも応用できます。
使うデータは、顧客のプロファイル、購買履歴、自社サイト行動履歴(どのページを閲覧していたか)など。こうした関連データを入力層としてAIソフトに食べさせて、ニューラルネットワークで確率計算モデルを作ります。顧客の購買履歴が蓄積され、ウェブでの行動履歴がデータとして残っていれば、機械学習を繰り返して精度をさらに高めていくことが可能になります。
私もこのAI売上予測モデルに携わってきましたが、予測の精度は非常に高いと実感しました。このモデルにより、生産数量の最適化や値引き販売の抑制が可能になり、結果として収益改善が実現します。購買予測モデルは、戦略やマーケティングを変える力を持っているのです。
更新:11月22日 00:05