2019年04月08日 公開
2023年03月07日 更新
しかも、飛び込み営業の場合、その前に大きな壁があります。それが「面会のアポ取り」です。
今の時代、突然電話をしてアポを取るのは、簡単なことではありません。もし、10件電話して1件のアポしか取れないとなると、先ほどの「335」の法則における成功率は、0・45%にまで下がってしまうことになります。
アポイント成功率(10%)
×訪問成功率(30%)
×提案成功率(30%)
×クロージング成功率(50%)
=商談成功率0・45%
では、成功率を少しでも高めるためには、どうすればいいのか。優秀な営業マンのやり方を横展開する、営業の本を読むなどで、各コンバージョン・レートを改善することは可能でしょう。
ただ、こうした営業スキルというものは、持って生まれたものがかなりの部分を左右するのも事実です。話し方はトレーニングである程度までは上達しますが、うまい人は教わらなくてもうまいのです。
文章や提案書作成も、生まれながらに、相手に刺さるツボがわかる人もいます。察知力や気づきの力が飛びぬけている人もいます。何もしなくても好かれる雰囲気を持った営業マンもいます。
結局、アタック件数を増やすほかないというのが現実なのです。商談だけでなく、何か用事を作ってなるべく頻繁に顧客に会いに行く。そうした努力で母数を増やすほか、営業の成果を上げる方法はありません。
555ファネルの職種でも、基本は同じです。個人のスキルを磨くことで50%の成功率を60%に上げることはできるかもしれませんが、それを70%、80%まで上げていくのは、至難の業です。
つまり、「どうしたら営業成績が上がるのか?」という問いに対する答えは、旧来型の部長が言うような「足で稼げ」です。現場のカンと経験は意外と正しいということです。
ただ、大事なのは「伝え方」。「とにかく営業は足で稼ぐものだから、つべこべ言わずに外へ出ろ」と言われるのと、コンバージョン・レートの話を出した上で「だから、大変だろうが顧客を訪問しよう」と言うのとでは、どちらがより伝わるかは一目瞭然です。
営業の仕事というのは、ときに自分のやっていることの方向性がわからなくなり、あまりに遠いゴールに徒労感を抱くことも多いものです。だからこそ「数字で話す」ことで、目指すところと現在地を「見える化」することが重要になってくるのです。
そのためには、ファネルの考え方を用いて、自社の営業を見える化することが先決です。すると、営業の現場では「あと100万円の売上が必要なので、1人5件ずつ訪問件数を増やしましょう」「営業マンが月にあと50件アタックをかければ1千万円の利益が期待できる。そのためにも、環境整備に力を入れよう」などという「数字を使った言葉」が飛び交うことになるのです。
(斎藤広達著『数字で話せ』より一部抜粋・編集)
著者紹介:斎藤広達(さいとう・こうたつ)
シカゴ大学経営大学院卒業。ボストンコンサルティンググループ、ローランドベルガー、シティバンク、メディア系ベンチャー企業経営者などを経て、経営コンサルタントとして独立。その後、上場企業の執行役員に就任し、EC促進やAI導入でデジタル化を推進した。現在は、AI開発、デジタルマーケティング、モバイル活用など、デジタルトランスフォーメーションに関わるコンサルティングに従事している。
更新:11月22日 00:05