2019年04月26日 公開
2023年01月30日 更新
とはいえ、「どんな『二枚目の名刺』を持てばいいのかわからない」という人が多いのではないだろうか。
「そうだと思います。そこで私たちは、『NPOサポートプロジェクト』という、皆さんが『二枚目の名刺』を持てるきっかけになる場を提供しています。
まずは様々なNPOの代表の方を招いて説明会を開き、参加者には、自分が共感し、一緒に活動したいと思えるNPOを見つけてもらいます。そして、一つのNPOにつき5人程度の社会人チームを組み、3カ月単位の有期で、実際にプロジェクトに取り組みます。プロジェクトのテーマや目的は、NPOごとに様々です。
参加者の中には、プロジェクトが終わったあと、『自分が本当にやりたいことが見つかった』と正式にそのNPOのメンバーになる方もいれば、活動をしているうちに自分の中にある別の問題意識に気づき、改めて他のNPOのプロジェクトに関わる方もいます。こうして、自分にとっての『二枚目の名刺』を見つけていくのです。
頭の中だけで『何をやろうか』と考えても見つかりませんから、とにかく動いてみることが大事です」
会社の外での活動というと、「何をやりたいか」よりも「何ができるか」を考えるものだろう。だが廣氏は、「できること」よりも「やりたいこと」を優先したほうがいいと話す。
「例えば、あなたがウェブデザイナーだったとして、あるNPOのウェブサイトの制作をお手伝いしたとします。NPOの人たちはとても喜んでくれるでしょうし、自分もちょっとした満足感が得られるかもしれません。でも、普段の仕事でやっている『できること』を社外の活動でやったとしても、自分の成長にはつながりませんよね。
ですから私は、『二枚目の名刺』は、たとえこれまでに経験したことがないことでも、『やりたいこと』を選ぶのがいいと思っています。
どうせこれまでに経験していないことをするのなら、できるだけかけ離れたことをするほうが、大きく成長できます。
NPOサポートプロジェクトでも、参加者の皆さんには、ご自身の経験やスキルではなく、ミッションや想いへの共感を大事にして、NPOを選んでほしいと話しています」
面白いことに、「できること」よりも「やりたいこと」を優先して活動するうちに、それまで自分が気づいていなかった新たな能力やスキルを発見することがあるそうだ。
「普段、会社の仕事でやっている当たり前のことなのに、社外でやると、『そんなことができるなんて、すごいですね!』と言われることが、よくあります。
以前、テレビ局のディレクターの方がプロジェクトに参加されたのですが、あるインタビューシーンをビデオに撮らなくてはいけなくなったときに、その方が撮ると、寄りや引きの使い分けが絶妙で、引きこまれる映像になっていました。業界の人から見れば、『カメラマンじゃなくたって、それぐらいできるのは当たり前』なのかもしれませんが、私たちが見ると、すごい能力だと感じたのです。
普段の仕事とはまったく別の場所に身を置くことで、社会の中での自分のスキルや能力の客観視が可能になります。
ただし、極論を言えば、仮に特筆できるスキルや能力が何もなかったとしても、その人が活動に参加するだけで、場に価値が生まれると、私は考えています。学校を卒業してからずっと会社で働いてきた人と、NPOで活動をしてきた人とでは、働く風土も、価値観も、発想も、大きく異なります。その両者が交わることで、新たな発見が生まれ、お互いにとって自分を成長させるきっかけとなるからです」
更新:11月22日 00:05