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たった2本の線を引くだけで、複雑な問題を簡単にする方法

2019年04月02日 公開
2023年03月10日 更新

木部智之(パナソニック システムソリューションズ ジャパン部長)

 

マトリクス作りはモレなく、ダブリなく

 2軸フレームワークには、2本の軸を左上で交差させる「マトリクスタイプ」や、中央で交差させる「4象限タイプ」などがあります。

 このうち、私がタスクが溜まってパニクっている部下に作るように指示したのは、マトリクスタイプのフレームワークです。

 マトリクスは、前述のように、問題の全体像を捉えたいときや目の前の雑多な事象を整理したいとき、複数の選択肢に優先順位をつけたいときなどに便利です。

 マトリクス作りの際に注意したいのは、縦軸も横軸も、モレなく、ダブリなく、同じレベル感で項目を洗い出すことです。

 例えば、クルマの購入を考えている人が、縦軸にメーカー、横軸に「セダン」「クーペ」「ステーションワゴン」といった車種を並べたマトリックスを作って、どのメーカーのどの車種がいいかを比較検討するとしましょう(下図参照)。

 このとき、「メーカーにホンダを入れるのを忘れていた」というようなモレがあると、重大な失敗につながります。

 また、「トヨタ」「ホンダ」「輸入車」といったように項目のレベル感が不揃いだと、的確に比較することが難しくなります。

 できあがったマトリクスのマス目を埋めていく際には、律儀にすべてを埋める必要はありません。「クーペにはまったく興味がない」という人であれば、そもそも検討の対象外なわけですから、そのマス目には何も書かなくていいわけです。

 ムダなことに思考のエネルギーや時間を使わないことも大切です。

 

4象限タイプは2軸の設定が鍵

 一方、4象限タイプのフレームワークは、様々な事象のポジショニングを明確にしたいときや、そのポジショニングをもとに戦略を立てたいときなどに使うと便利です。

 私が以前、20人程度のメンバーがいるシステム開発のチームを新たに受け持ったときのことです。その時点では、メンバーのスキルはまったくわかりませんでした。

 チームでシステム開発のプロジェクトに取り組む際には、リーダーシップとITに関する専門スキルがとても重要になります。そこで、複数の人に、各メンバーのリーダーシップとITスキルについて5段階評価で採点をしてもらい、平均点を出しました。そして縦軸に「リーダーシップ」、横軸に「ITスキル」を取った4象限タイプのフレームワークを作り、メンバーのスキルを「見える化」したのです(下図参照)。

 4象限の右上や左上は、リーダーとしてチームを引っ張ってもらうことが期待できる人材です。また、右下は、ITスキルのスペシャリストとして、専門的な仕事を安心して任せられる人材です。一方、左下の人材は、できるだけ早く右下や左上に移ってもらえるように育成を図る必要があります。

 このように、メンバーのスキルを4象限のフレームワークに落とし込んだことで、チームの人材活用や育成戦略を立てることができました。

 ただし、私がこの4象限タイプのフレームワークをスムーズに作成できたのは、「システム開発の部署では、リーダーシップとITスキルが重要」であることを、あらかじめ知っていたからです。もし知らなければ、縦軸と横軸を何にするか相当迷ったはずです。

「4象限のフレームワークを作ろうと思ったが、縦軸と横軸を何にすればいいかわからない」というときは、まずはマトリクスタイプのフレームワークを作ることをお勧めします。

 メンバーのスキルでいえば、縦軸にメンバーの名前を書き、横軸に「ITスキル」「管理スキル」「リーダーシップ」「コミュニケーション力」「英語」といったスキルを書き出して、マス目を採点した数値で埋めていきます。

 そして、完成したマトリクスを眺めながら、「縦軸は『リーダーシップ』として、横軸は『管理スキル』かな? いや、でも何か違うぞ……」というように、試行錯誤を重ねながら、しっくりとくる縦軸と横軸を探すのです。

 また、マトリクスを眺めているうちに、「この項目だけ点数のバラツキが激しい」といった特異点が見つかることがあります。そんなときは、特異点のある項目を軸の一つに定めてみましょう。すると、バラツキがあるぶん、それぞれの事象のポジショニングが明確に分かれる4象限となり、事象の整理や分析を行なううえで役立てることができます。

 

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著者紹介

木部智之(きべ・ともゆき)

パナソニック システムソリューションズ ジャパン〔株〕現場プロセスプロジェクト部部長

横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本アイ・ビー・エム〔株〕に入社。プロジェクト・マネジャーとして大規模システム開発プロジェクトに関わってきた。18年より現職。著書に『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)などがある。

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