2019年03月14日 公開
エレベーターのカゴを呼ぶための押ボタンや、到着や運転方向を示すホールランタン、現在の位置を示すインジケーターなど、エレベーターホールには様々な表示器が設置されている。普段は大して気にも留めていない人がほとんどだろうが、これらを専門に製造・販売している老舗メーカーがある。1933年創業の〔株〕島田電機製作所だ。創業者の孫で現社長の島田正孝氏に、専業メーカーとして成長してきた歴史と、これからの展望を聞いた。
島田電機製作所が創業した1933年は、日本でエレベーターが普及し始めた時期。東京都港区白金で、小さな町工場としてスタートした。当時、どのような製品を作っていたのかは、はっきりとはわからないそうだが、「やはりエレベーターの部品を作っていたと聞いている」と島田氏。
「ただ、当時はエレベーターに求められるのは機能性だけで、意匠性は求められていませんでした」(島田氏)
島田電機製作所は、その後、オーダーメイドの意匠器具メーカーとして成長してきた。高層ビルなどでは、エレベーターホールも建築デザインの一部。そのため、1980年代頃から、ホールランタンや押ボタンなどにも、ビルごとのデザインに合った意匠のオーダーメイド品が求められるようになったのだ。同社の製品は、誰もが知る数々の高層ビルにも使用されている。
「東京都庁舎が完成した1991年頃は高層ビルがどんどん建設された時期で、とても忙しかったですね。私が当社に入社した93年がエレベーターの新設台数がピークだった年で、年間約4万台でした。意匠も、新しいもの、派手なものが求められていました」(島田氏)
それにしても、大手電機メーカーなど、他の企業でもエレベーター用の意匠器具を作れるのではないかと素人には思えてしまうが、島田電機製作所の強みはどこにあるのだろうか。
「傷一つ許されない厳しい品質基準をクリアしていることに加えて、受注から納品までを1カ月半~2カ月という短期間でできる技術を持っていることだと思います。また、日立、東芝、オーチス、三菱など、エレベーターの本体を作るメーカーはそれぞれ設計思想が違うのですが、それらのすべてに対応できることも強みです」(島田氏)
同社は、設計・開発から、板金、アクリルの加工、組み立て、検査までを自社内で一貫して行なっており、短期間での納品を可能にしている。オーダーメイドだけに、手作業で行われる工程が多い。大量生産なら金型を使って成形できるアクリルも、同社の工場では一つずつ工作機械で削り出し、紙やすりや布で磨き上げている。受注してから原材料を発注していては間に合わないため、アクリルなどは多種多様なものを在庫として用意している。
板金(左)とアクリルを布で磨き上げる工程(右)の様子
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更新:11月25日 00:05