2018年12月05日 公開
2023年03月14日 更新
では、実際に必要な「お金の知識」とは何か。多くの人は「お金を増やすための知識」だと考えると思います。ただ、実はこの考え方は極めて危険です。
多くの「資産運用」についての勉強会や資産セミナーでは、どうやったらお金を増やせるかというところに重点を置いているように感じます。ただ、お金についての基礎知識がない状況で「どうやって増やすか」ばかり追求するということは、自宅を建てるにあたって地盤調査も何もせず、さらには土台のくい打ちすらせずに家を建て始めるようなものといっても過言ではありません。これでは、30年、40年も住むような家を建てることは不可能です。
そして、それはお金の運用も同じこと。子供や孫の世代にまで渡って揺るがないお金に対する安定を求めるなら、まず「お金についての知識を得る」ことからスタートしなくてはならないのです。具体的には、「私産を知る」→「私産を作る」→「私産を増やす」→「私産を活かす」、 この“4つのステップ”を順番に高めていくことがとても重要です。
お金についての知識と言ってもいろいろありますが、我々が重視しているのが「お金の歴史を知ること」です。
お金の歴史を知ることがなぜ重要なのか。一例を上げましょう。
日本人の多くが抱いている感情に「お金は卑しいものである」というものがあります。あまり声高にお金のことを語るのは品が良くない。ただ、その常識があるために、金融リテラシー教育が遅れてしまっているという側面があることは否めません。
ではなぜ「お金は卑しいものである」と我々は考えがちなのかというと、それは江戸時代まで遡ります。
江戸幕府が布いた「士・農・工・商」制は、職業を4種類に大別するものでした。身分として一番上に置いたのは武士、その下には農民そして職人というモノづくりの職業を置き、お金を扱う商人は一番下の階級でした。
当時の武士たちはお給料(俸禄)をお米でもらっていました。「貴穀賤金(きこくせんきん)」という言葉があったように、江戸時代の経済思想の一つとして金(当時の銭)よりも米穀を重んじるべきとする思想があったそうです。その結果、お金に関することを口にすることは卑しいという風潮が生まれたようです。
ただし、江戸時代も末期になると米よりも貨幣の価値が高まり、身分的には下であるはずの商人に頭を下げて借金をする武士も多かったと言います。幕府崩壊後はいうまでもなく、貨幣経済の時代になり、今に至ります。
にもかかわらず、我々の潜在意識にはいまだに江戸時代の意識が刷り込まれているわけです。これを知るだけでも「お金は卑しいものである」という常識が、いかに一面的かがわかると思います。
「お金にはどんな歴史があるのか」「お金が果たす役割とは何か」……それを知ることが、日本人の金融リテラシーを高めるスタートとなるのです。
更新:11月24日 00:05