2018年12月13日 公開
2023年03月14日 更新
自分自身に対しても、客観視することは欠かせない。
「悩んでいる人は、しばしば、『悩んでいる自分に悩む』状態になってしまいます。誰しも経験があると思います。クヨクヨしている自分を『弱い人間だ』と責めても、ますます自信をなくすだけで、何も解決しません」
岩田氏は、青年時代から、そうなるたびに、ある言葉に救われてきたという。
「『人間は努力する限り迷うものである』という、ゲーテの言葉です。悩むのは、自分が一所懸命に成長しようと努力している証なのです。この言葉に、何度も勇気づけられました」
この他にも、苦境のとき、名言や本の中にある言葉に救われた経験が数多くあると話す。
「私は、幼い頃から格言の類が好きで、計算ドリルの端に書いてある諺や名言を、その部分だけ切り取って保存するような子供でした。
今も、本を読んで心に残った言葉を書き写すようにしています。書くという行為は、心を落ち着かせる効果があります。
心が疲れたときは、名言やお気に入りの言葉が詰まったノートをパラパラ見返すと、なぜか、そのときに必要な言葉が目に入ってきます」
自身のメンタルを健康に保つために行なっている習慣は、朝晩の散歩も含め、他にもある。
「夜、ストレスで眠れないときは、幼い頃を振り返って、嬉しかったこと、楽しかったことを順番に思い出します。部活で試合に勝ったこと、先生に褒められたことなどです。大好きだった女の子のことでもいいかもしれませんね(笑)。
それらを思い出すことで、自信を取り戻すことができます」
岩田氏は、今は、これまでのつらかった挫折の経験も、逆境も、「良いこと」として捉えられるようになっているという。
「私にとってよりプラスだったのは、留学そのものよりも、その前に味わった挫折の経験のほうだったかもしれません。あの経験をする前の私は、仕事のできない人を『努力しない人』と切り捨てるような厳しい面がありました。挫折して初めて、人の弱さや痛みが理解できるようになりました。自分はこんな弱い人間なのに、人のことなど責められない、と。私のようにメンタルの危機を乗り切ることができれば、逆境が成長の糧になることは間違いありません」
《取材・構成:林 加愛 写真撮影:長谷川博一》
《『THE21』2018年12月号》
更新:11月25日 00:05