2018年11月01日 公開
10分1,000円、カットのみでシャンプーやブローはしないという画期的なコンセプトで創業して以来、理美容業界を席巻し続けている『QBハウス』。運営するキュービーネットホールディングス社長の北野泰男氏は、金融業界から同社に転職した人物だ。「自分が創業者ではないからこそ、経営理念の重要性を実感している」という北野氏に、経営理念に込めた想いと、それを具現化する施策についてうかがった。
北野泰男氏がキュービーネット(現・キュービーネットホールディングス)に入社したのは、創業から10年が経っていた2005年のこと。当時、同社は経営理念を掲げていなかったという。
「当社の事業はビジネスモデルがしっかりしているので、創業者が現役のうちは、経営理念がなくても会社が成長できたからです。
しかし、創業者が退任し、組織が大きくなって社員が増えると、会社の目的や存在意義をそれぞれが自分の解釈で語るようになり、言うことが人によって少しずつ異なるという問題が起きてきました。
そこで私たちは、創業者の想いをきちんと言語化して、『我々はなんのためにこの事業をしているのか』を、社員全員が共有できるようにしたのです」
こうして生まれたのが、上に挙げた二つの経営理念だ。一つ目は、自社のサービスについて、シンプルな言葉で表している。
「『お手軽』は、QBハウスのサービスの特徴を端的に表した言葉です。短時間、低価格、利便性の高い立地など、様々な要素を掛け合わせたお手軽さを提供するのが、私たちの目的です。
お手軽さは、一般的なヘアサロンが重視する『癒し』の対極にある価値観ですが、長時間かければお客様の満足度が高まるというのは思い込みです。我々の主要顧客である忙しいビジネスパーソンにとっては時間の価値が何よりも高いので、10分で完了するサービスを提供する意義は大きい。
『均一』という言葉も、髪を切るスタイリストによっては『個性を出すな』と言われているように感じるかもしれませんが、お客様に安心して利用してもらうためには、どの店舗でも同じ品質のサービスを受けられることが重要なのです。
私と同様、創業者も理美容業界以外の出身で、お客様の立場で『こんなサービスがあったらいいな』と思うことを事業化したのがQBハウスですから、ここが決してブレてはいけないと考えました」
創業者から受け継いだその想いは、同社の経営戦略においても揺るぎない軸となっている。
「『人は集まったのと同じ理由で去っていく』と私は考えています。お客様はお手軽さを求めて集まっているので、もし私たちが『儲けるためにシャンプーやブローもやろう』と言い出したら、『もっとお手軽な店に行こう』と去っていくでしょう。
お手軽さという我々の存在意義を追求し続ける限り、お客様は集まり続けてくださるはずです」
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更新:11月22日 00:05